脱ぐな！　風紀委員会との戦い｜リアクション

脱ぐな！　風紀委員会との戦い

　廊下を歩いていた羽生碧南は、突然内なる衝動に駆られた。
　大好きな乙女ゲームの妄想が突然浮かんだりするのは、いつものことだけど。
　それは、少なくとも乙女ゲームの展開にはないものだった。
（脱ぎたい……何だかここで脱がなきゃいけない気がする）
　今まで部活の先輩たちに恥ずかしい服を着せられたりしたけど、碧南自身にはそんな趣味はない。
　はずなのに。
（ここは学校の廊下だけど、それが何？　とにかく脱がなきゃ！　こんなところでこんな制服なんか着ている場合じゃない！）
　内なる声が叫ぶ。
　もはや理性など完全に雲散霧消しているのか？
（い、いや、やっぱりまずいでしょ……）
　乙女たるもの、何の恥じらいも躊躇いもなく……というわけにはいかない。
　碧南は悩んだ。インスタントラーメンができるくらいの時間。
　しかし。
「やっぱり、脱ぎたい！」
　この思いには逆らえない！
　乙女ゲームのヒロインたちだって、恥ずかしくても思いを抑えきれず、自分の心に素直になるではないか。
　いや、乙女ゲームだし普通脱ぎはしないんだけど。たまーに、毛色の変わったルートにあって引くくらいだろうか。
　そんなことはともかく、碧南の手はひとりでに動き出した。
　まず制服の上着を脱ぎ、次にリボンタイをほどいて廊下に捨てる。
　それからブラウスのボタンを一つ一つ外して、バサッ、と放り投げる。
　ブラウスの下には黒のタンクトップがあるがこれも脱いで放り投げた。

　恥ずかしがることなんてない。
　何しろ、脱いでいるのは碧南だけではないのだ。
　今や皆が脱いだり、脱がしたりしている。

　新田亮は、ボクシング部で活動中、何やら騒がしい声を耳にした。
「なんだ？」
　丁度休憩時間だった事もあり、気になって部室の外へ出てみた。
「……どうしてこうなった」
　目の前の光景に固まる亮。
　男女が共に服を脱がしあっている。
　それは、まさに天国と地獄が入り混じるカオスといえた。
（ろっこんの影響だよな？　いや寧ろそうであってくれ！　母校が変態の巣窟になるのは勘弁だ）
　若干頭を抱えたが、直に思考を切り替える。
（この状況が校外に知れ渡るとマズい。止めなくては）
　
　碧南はスカートも脱ぎ捨てて完全に下着姿になっていた。
「おい、やめろ！」
　さらに下着に手を描けようとした碧南は、亮に声をかけられ……手を止める。
「そうだ。それ以上はだめだろ」
　しかし、脱ぐのをやめた碧南は突然亮に襲い掛かった！
「ま、待て！」
　こうなると止めるどころではない。
　なにしろ身長180センチの高身長女子が下着姿で襲い掛かってくるのだからすごい迫力だ。
「そんな布切れ……いらないでしょ？」
　しかも亮はボクシング部での活動中。タンクトップに短パンという、余分なもののない服装なわけで。
「大人しく脱がされるわけにはいかない！」
　逃げ出そうとした亮だが、背後から押さえられた。
「何？！」
　目の前の下着姿に気をとられて背後の気配に気づかないとは、不覚だった。
「さあ、じゃんじゃん脱ごう～♪」
　茶髪サイドテールの三宅ゆりが、亮のタンクトップに手をかける。
「やめろ！」
「恥ずかしがらなくていいよー」
「やめないと……」　
（女子を殴りたくはないが、このまま脱がされるわけには）　
　ゆりが両手を亮の服にかけた時、亮は素早く態勢を変え、柔道の技で組み伏せた！
「きゃあっ！」
　柔らかい感触。
　弾みで、ゆりのはだけた胸に触れてしまった。
「バカッ！　脱がすのはともかく、触らないでよ！」
「わざとじゃないぞ。自分から襲ってきたくせに……」
　とにかく今がチャンスだ。亮は慌てて起き上がり、逃げ出そうとする。
「逃がさないわよ」
　碧南が追いかけようとするが。
「痛っ！」
　その手を、飛んできたチョークが直撃した。
「助かった。この隙に」
　亮はどうにかその場を逃れることができた。
　逃げられた碧南は、脱がしたい欲の向け場に迷っていたが。
　やがて、こんな布切れ、いらないとばかりにブラに手をかけた……

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