脱ぐな！　風紀委員会との戦い｜リアクション

脱ぐな！　風紀委員会との戦い

「たとえ神魂の影響とはいえ風紀の乱れを看過することは出来ない。風紀委員総員抜刀（チョーク）許可！」
　風紀委員長の鷹司凜太郎の凛々しい掛け声と共に、風紀委員たちがチョークを構え、投擲する。
　
「高校って、こんなに開放的な所じゃないわよね……？」
　貴家衿花は、廊下で目のやり場に困っていた。
（１年生の風紀委員はこういった事態が初めてで戸惑うことも多いだろう。見本にならないといけないな）　
　チョークを投擲しながら説明する凜太郎。
「残念なことに我が校では稀によくある事態だ。こうなったらもう躊躇してはいけない。信念がぶれるとたちまち空気に飲み込まれてしまうからね。基本的に手や、脚の関節を狙う。脱がせようとする者優先だ」
（まだウォルター先生の域には達していないがこれでも弓道の心得がある武芸者の端くれ。遅れはとらないつもりだ）
「はい！」
　凜太郎の凛々しい姿に感心しながら、真面目に答える衿花。
（委員会に入って早々の騒動がこんなのでちょっと驚いちゃったわ）
　戸惑いながらも、他の風紀委員と連携して、脱がそうとしている人を止めよう、と思う衿花である。
（女子を止める事を特にがんばろう。男の人だとなかなか止められないだろうし）
「もう！　エッチな事はいけないんですからね！　そんなに脱ぎたいなら女子更衣室で好きなだけ脱いで下さい！」
　何人かが注意されて逃げていくが、委員の言葉など耳に入らない者も多いようだ。

「えー！？　みんなどうしちゃったの！？」
　１年生のパトリシア・プロウライトも動揺していた。
「どんどん制服を脱ぎ始めちゃったよ。せっかく寝子高の制服ステキなのに！」
（めっちゃカワイイ！　オシャレ！　な制服をアレンジならともかく脱ぐなんてトンデモナイ……）
　そう思うパトリシアだが。
（でもなんだか脱ぎたい……！？）
　脱いでる人を見ると羨ましくって葛藤するパトリシア。
「でも制服を捨てるなんて私には……！　パティはこの制服に憧れて寝子高に入ったんだもの！」
　頭を抱えたパティの手に、かぶっている犬耳帽子が触れる。
「そうだよね、マルク！　お願いパティさんを励まして！」
　帽子に話しかけると、ろっこん『いつでもいっしょ』が発動した。
「なんだこの騒ぎは？」
　帽子に宿る人格『マルク』が喋りはじめる。
　その声を聞いて、少しパトリシアは落ちついた。
「うう、なんとか我慢できてる……けど……やっぱり脱ぎたい欲は消えないの……」
「おい、気をつけろ！」
　悩むパトリシアに、裸の生徒が襲い掛かってきた！
「きゃっ！」
　そこへ、光の速さでチョークが飛んできた。
「ぎゃっ！」
「はっ……風紀委員会の先輩！？」
　風紀委員たちが、脱がそうと襲い掛かる者や下着まで脱ごうとする者に向けチョークを飛ばす。
「スゴイかっこいい！！　ばしーっっと皆を取り締まる姿……私もあんな風になりたい……制服のあるべき姿を追求したい！！」
　パトリシアの中で、新たな思いが湧き上がる。
「マルク！　できたよ、パトリシアの新たなる目標が！！」
「何事だ……？」
　小声でマルクに囁き、パトリシアは手を上げた。
「先輩っ！　パティさんも、私も、風紀委員なります！」
「それは頼もしい。よろしく頼む」
　凜太郎が頷き、どこからともなく腕章を取り出してパトリシアに渡す。
　白地に青く書かれるは、『風紀』の二文字。
　パトリシアはさっそくそれを装備した。
「風紀委員になったらば、まるで頭にかかってたモヤモヤが晴れたようだよ！　そう！　制服をきっちりみんなに着こなしてもらうことこそが私の使命……！」
　かくしてパトリシアは風紀委員となった。
　

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