ろっこん上等！　エアガンバトル in ショッピングモール！｜リアクション

ろっこん上等！　エアガンバトル in ショッピングモール！

■超常サバイバルゲーム・チャプター５
「へっ、やっぱ銃よりこっちだな！」
　玖珂新は拳を握りしめると、凄まじい握力でもって八神修の腕を掴んだ。振り払おうとするも、まるで万力に挟まれたかのように動かない。
　人間を振り払う知識は充分にもっている修だが、そんな彼をもってしてもふりほどけないスーパーパワーなのだ。
「ぐ……っ」
「つってもスポーツだ。ボコしたりなんてしねーよ！」
　強引に振り上げ、これまた強引に放り投げる。
「ゲン、ぶっ込め！」
「応！」
　魚塚源三のショルダータックルが炸裂。修は思い切り吹き飛ばされ、商品棚をなぎ倒した。
　頭を押さえ、よろよろと起き上がる。
「なんて馬鹿力だ……非常識な……」
　新の腕力で、修が分解能力の応用で繰り出した物体落下などの攻撃をことごとくはねのけてしまう。
　凄まじい握力で鉄塊を握り込んだ拳やその力で繰り出したパイプは、高い攻撃力と防御力を備えていた。
　銃を扱う時はその『片手で握り拳を作る』という制約上発揮できなかったこの力が、ゴースト化することで十全に発揮できるようになったのだ。
　そこへ加えて源三だ。
　彼はマンガに出てくるフランケンシュタインの怪物よろしく無防備に突っ込んでくるが、ろっこん能力の影響であらゆるダメージが瞬時に回復してしまう。
　だが、だがしかし。
「その程度の技術だけなら、俺が苦戦するはずはないんだ……」
　修とて百戦錬磨の男である。知恵と工夫でパワフルな敵を倒してきた。
　そんな彼が最も苦戦しているのは新と源三のチームワークであり、信頼関係であり、それゆえに多少無茶な動きをしても大丈夫という枷の外れっぷりである。
　『リミッターの外れた奴』。
　それは、一見無敵っぽい修の弱点、というより天敵であった。
「アニキ。これ以上動かれちゃ厄介ですぜ。組み伏せちまいましょう」
「おう、やってくれゲン」
　源三のパワーで修を組み伏せるのは簡単だ。そのうえ、あらゆるダメージをものともしない源三に組み伏せられては、さすがの修もお手上げだった。
　そこへ。
「シューくん、そのままです！」
　美咲紀が小銃によるバースト射撃を始めた。
　盾になろうとする新。そこへ飛びかかる、美緒。
　肩を怪我した彼女だが、美咲紀のろっこん能力によって元通りに治癒したのだ。
　鷹状態でまっすぐ滑空し、接触寸前に人間状態へチェンジ。自重を勢いに乗せて叩き付け、新を仰向けに転倒させたのだ。
　小柄でやせ形の美緒といえど、数十キロの体重をニードロップで叩き付けられれば新も防ぎきれないのだ。
「ぐおっ！？」
　開放された壁。
　残るは敵参加者のみ。
　と言うところで飛び出したのが、上下左右と染井湊である。
　二人は、左右のろっこん能力を使ってバリケードごと一気に移動。美咲紀へと距離を詰めに行く。
　左右は。
「そこですわ！」
　左右は盾にした木箱をうまく操作しつつ、美緒にペイント弾を命中させた。
　一方で美咲紀は銃を乱射するが、木箱によって阻まれる――かに思えたが、修が絶妙なタイミングで木箱を分解。無防備になった左右にペイント弾が着弾する。
「上下――！」
「すぐに戻ってきますわ。ゴーストとなって！」
　びしっと指をさして、自陣へとダッシュ（荷車に座ってシャーって行くお手軽移動法）する左右。
　残るは湊一人だ。彼の木箱も例外なく分解されるが、柱の裏に飛び込んで銃撃を防御。手すりに背をつけて呼吸を整える――が、その瞬間、寄りかかった手すりが分解され、湊は一階フロアへと転落した。
「今です！」
　とうっ、と言って手すりからギリギリまで身を乗り出し。湊を上から射撃する美咲紀。
　湊はといえば、一階のフロアタイルめがけてまっさかさまだ。
　終わった。
　湊がそう確信した時、ぽっふんと彼の背中がクッションに受け止められた。なんかわからないけど偶然飛んできたクッションが偶然彼の背中を受け止めたのだ。
　更に言うと美咲紀の放った銃撃は不自然な軌道を描いて偶然彼を外れた。
「――！」
　咄嗟に仰向け姿勢のまま銃撃。美咲紀の額にぱちんとペイント弾がぶつかり、美咲紀はきゃあと言ってひっくり返った。
「何が起きたんだ？　僕はてっきり……」
　懐から本が転がり落ちる。開かれた部分には、湊の文字で『上下からの被害』と書いてあった。
「あっ」
　湊は『上下左右という名前の少女』からの被害を想定してこう書いたが、書いたことに依存するろっこん能力は素直に『上下という方角』を含めていたのだ。
「あとで上下に感謝しておこう」
　あぶなかったあ、と言って湊は大の字になって脱力した。

　試合終了。
　勝者は――赤ネコさんチーム！

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：青空綿飴
ファンレターはマスターページから！

ごきげんよう！　サバイバルゲームはそれだけで楽しいものですが、ろっこん能力を加えることで何が起こるか分からないハチャメチャなバトルが楽しめるものですね。
相手を殲滅する能力がかえって足かせになってしまったり、無力化する能力が相手によって相性が悪かったり。いつもと違う異能バトルをお楽しみいただけたかと思います。

それでは、次の試合でお会いしましょう。

↑ページトップに戻る