ろっこん上等！　エアガンバトル in ショッピングモール！｜リアクション

ろっこん上等！　エアガンバトル in ショッピングモール！

■超常サバイバルゲーム・チャプター３
　風の音は人によって異なるという説がある。
　耳の形、歩く速度、背丈や体重、そして聴覚といった差だ。とはいえ人間の形をしている以上そう大きな違いはなく、共通した風の音というものがある。
　しかし。
　ある二人に関しては、他人は全く聞くことの無い風を聞いていた。

　銃口が向けられる。サキリ・デイジーカッターは身体に叩き込まれた動作によって弾丸よりも早く振ったカッターはその本来の用途と異なり、彼を目標の背後へと瞬間移動させる。
　目標に背を向けたままなので身体を反転――させつつ再び瞬間移動。対象の頭上をとる。
　更に念をおいて瞬間移動し、斜め後ろの死角へと回り込んだ。
　発砲。とほぼ同時に柏手を打つ伊藤美緒。
　身体が鷲へ変化し、顔面にヒットするはずだった弾が通過していく。
　ライフのつきた参加者たちが飛びかかるが、大きく羽ばたいた美緒を誰一人捕まえることができなかった。巻き起こった風で自らを吹き上げるように、翼に風をうけて舞い上がる。
　即座に短機関銃を振り上げ追撃するサキリだが、ペイント弾は壁や天井を染めるばかり。美緒の滑空はサキリを追い越した先。手すりのむこうへと滑り込んだ。
　変身を解除。銃をとって銃撃。瞬間移動によって回避。
　死角から打ち込んだ筈の弾は虚空を抜け、模造商品棚へと着弾する。
　次に現われたのは美緒の頭上。空中だ。短機関銃の粗い射撃が彼女を狙う。咄嗟に鷲に変じた美緒だが、翼を広げればいい的だ。身体を丸めた最低限の滑空でやりすごす。サキリとていつまでも頭上から射撃できるわけではない。落下の重力負荷を受けないために即座に移動しなければならなかった。
　一階噴水前にて着地。
　吹き上げる水を突き抜けて飛ぶ美緒が変身を解く。
　サキリと美緒の目があった。
　瞬間移動。
　背後をと――ったサキリの額に、ペイント弾が着弾する。
「――ッ！」
　思わぬ射撃によろめくサキリ。
　一方の美緒は受け身もとらずにフロアタイルに肩から激突。うめき声をあげながら転がった。
「先を見切られるとは、ね」
　額をぬぐい、ため息をつくサキリ。
「あの体勢でまさか、背後撃ちを優先するとは思わなかったよ。受け身を取る暇もできなかったろうに。大丈夫かい？」
「勝負には勝ったけど……つつっ」
　肩をおさえ、苦笑する美緒。
　サキリと美緒は一度だけ握手をかわし、それぞれの陣地側へと走った。サキリはゴーストとなって味方の支援をするため。
　美緒は――。

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