推理ゲーム『ねこじま人狼』4th｜リアクション

推理ゲーム『ねこじま人狼』4th

●　二日目の処刑

　一日目は、話し合いの末、占い師として名乗り出たサキリ・デイジーカッターとヒューマ・ノ・スキッドのふたりが処刑された。翌朝、死体で見つかったのは騎士と名乗り出ていた水守流。道連れの恋人はなく、パンも焼けていた。
　このことは、残された志波武道、藤堂静、トワ・E・ライトフェロゥ、屋敷野梢の４名の中に少なくとも人狼とパン屋、そして高い確率で恋人が生存していることを意味していると思われた。
　藤堂静が示した霊媒情報は、
「サキリ君が黒で、スキッドの旦那が白だった」
　というもの。
　この情報が正しければ、四人の中に人狼がひとり紛れ込んでいるということになる。
　しかし、もし恋人も生存しているのであれば、人狼を吊っても恋人の勝利となる可能性もある。
　島民にとって厳しい状況が続いていたが、武道の恋人カミングアウトで流れが変わった……ように見えた。

「議論は尽くされたようですね。それでは、誰に投票するか指さしてください」
　エムアの言葉に、四人は一斉に心に決めた相手を指さす。

　志波武道は、トワ・E・ライトフェロゥを。
　藤堂静は、屋敷野梢を。
　トワ・E・ライトフェロゥは、志波　武道を。
　屋敷野梢は、藤堂静を！

「おや」
　エムアの金色の瞳が、珍しく驚きで見開かれた。
　全員の票がばらけた。予想外だ。
　梢は武道に投票すると言っていたのだ。しかし彼女がいま指さしているのは、間違いなく静である。
「ナンダッテ！」
「ほう……？」
「ど、どういうことデス、コズエ！？」
　梢の瞳には、強い覚悟が宿っていた。
「絶望的な状況……狼が３／４で勝利する、恋人の温情に任せた勝利で、果たしていいのか？　……否！　勝利は自分の手でつかむもの！　というわけで、最後の悪あがきをさせてもらいました！」
　ビシリ、エムアを指さして見据える。
「たしか、今回のゲームの勝利条件はこうでした。相違ありませんよね！？」

　　・「人狼」を殲滅できれば、島民チームの勝利
　　・「人狼」が一人でも生き残っていれば、人狼チームの勝利
　　・「恋人」が二人とも生き残っていれば、人狼、村人の生存に関わらず恋人チームの勝利

　エムアはやや気圧されたように頷く。
「ええ。相違ありません。……ああ、もしや、なんと」
「気づいていただけたようですね。そう。島民だけ……「生存」が勝利条件にない！　今回の島民の勝利条件は『島民の生き残り』ではなく、『人狼の殲滅』なんです！　つまり、この時点で２吊りじゃなくて４吊りでも勝利できる！　エムアさん次第ではありますが……ここに、賭けるしかないでしょー！」
「！」
「！」
「！」
　誰も気づかなかった可能性に、武道も静もトワも目を瞠る。
　そんなことが、ありうるのか。
　ゲームマスターの判断は。
　テーブルを囲む全員が、固唾を呑んでエムアを見つめた。
　エムアは紅茶を傾け、それからとても愉快なことに立ち会えたという喜びを口元に浮かべる。
「正直、予想外の展開でした。ですのでここは、はじめに提示したルールに則って考えましょう。まず、勝利条件については、屋敷野さんのおっしゃった通りに解釈できると思います。そして、今回のルールでは次のような一文を提示していました」

　※投票の結果、複数人が同票だった場合、決選投票は行われず同票だった全員が処刑されます。

「このルールに則って考えると、全員が一票ずつ獲得した今回の裁判は、決選投票は行われず、全員処刑となります。すなわち――」

　エムアは両手を広げると、武道、静、トワ、梢を四人ともを広げた腕の範囲内に入れ、キュッと縛るような手振りをしてみせた。

「誰もいなくなりました……！」

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