推理ゲーム『ねこじま人狼』4th｜リアクション

推理ゲーム『ねこじま人狼』4th

● もつれるライン

　目を閉じ、腕組みをして聞いていた流がゆっくりと目を開ける。
「素直に考えると屋敷野とサキリ、もしくはトワとスキッドのラインのどっちかが人狼陣営なんだろうけど」
「同感だ」と静。「俺もサキリ君と屋敷野の嬢ちゃんのセットで黒、もしくは、スキッドの旦那とトワの嬢ちゃんのセットで黒かなと感じた」
　すると、梢が、すかさず反論する。
「今、トワさんとヒューマさん、私とサキリ君を結ぶのは悪手です。私視点でもサキリ君は吊るべきです。狼が黒を投げる利点もあり、現時点では差をつけるべきじゃない。生贄狼によるミスリードかもしれませんよ？」
「……生贄狼」
　梢の言葉を反芻し、静はちびり、酒を舐める。
　二杯目は、夕焼けみたいな紅色の、度数の強い酒であった。
　だが、静に酔った気配は微塵もない。
「相方を犠牲にしてでも、片方さえ生き残ればいいってことか」
「そういうことです」
　頷く梢。一方、流は独り言のように考えを口にした。
「この状況一番ネックになるのは『何故パン屋で被ったか』だと思うんだよな。素直に見ても穿って見ても、騙るだけなら『らっかみ』か『騎士』の方がばれにくい。初手外したらほぼ島民の負けは決まるとはいえ、あえて『パン屋』ってのは……」
「梢ちゃん」
　ここで割って入ったのは武道だ。

「梢ちゃんの主張である『吊られていいけどいずれかの日に対抗を吊る』っていうの、つまり２回の吊りをパン屋で使い切るのを場合によっては受け入れるってことかな？　それ聞いた時、俺は、梢ちゃんはもう一人の仲間を生かしたい人狼かな？　って感じたよ」
　梢は僅かに目を瞠る。
「それは、私が生贄狼だってことですか？」
「いや、じつは人狼、てっきりらっかみ騙りしてくるかと思ったんだよね。この展開は予想外でさ。だからいまのところ俺は梢ちゃんが怪しいと思いまっす！」
「私の信用って……」
　がくり、と梢がテーブルに突っ伏したので、かえって武道の方が慌てて、梢の背を撫でる。
「わあーそんなに落ち込まないで。あくまで現時点で、だからさ。ただ、実際のところ、２回の吊りをパン屋で使い切る余裕はないんだよな……確実に黒を吊っていかないと」
「そう。吊り縄に余裕はない」
　サキリも頷く。
「屋敷野。僕は、自分が吊られても良いなんて自己犠牲戦法にはあまり賛同出来ないな。一度の失敗も許されない環境だし、そもそも島民同士ですら恋人の可能性を思えば味方とは限らない。村の決定であれば従うけど個人的には危険だと思う」
　――それに屋敷野の愛が篭もったパンも食べたいしね。
　紅茶を啜ってにっこりと笑うサキリ。梢は複雑な表情で、無言を貫き通した。

このページにイラストを設定する