推理ゲーム『ねこじま人狼』4th｜リアクション

推理ゲーム『ねこじま人狼』4th

● 錯綜する占い師とパン屋論争

「僕は占い師、恋人でもない。サキリさんを占って黒だったよ」
　黒、というとき、この言い方でいいんだよね、というようにヒューマは僅かにエムアを見た。
　問題ないとエムアが頷くと、ヒューマは空中に字を書くような動作をしながら考えを述べる。
「とにかく自分が占い師で、結果がわかっているからこそ、占い師って言っているサキリさんは一番疑う対象になるね」
「トーワーも！」
　トワはサキリをじっと見つめ、ヒューマに賛同する。
「コズエが白ならートワは黒になってしまうのーでー。サキリが人狼説を推すマス！」
　つられて皆いっせいにサキリを見たが、サキリの紅茶を飲む仕草は優雅で落ち着いたものだった。

「占い師は僕だ。屋敷野は白。僕から見ればスキッドさんとトワが人狼で確定だ」

「僕と？」
「トワ、デスかー？」
　ヒューマとトワが同時に抗議の声を上げた。サキリは二人の声を柳に風と受け流す。
「私見として、スキッドさんは実にマニュアル的な人狼だと思う」
「マニュアル的？」
　ヒューマの垂れ目がすこしばかり開かれる。
「そう。相方のトワが既にパン屋ＣＯしている以上、スキッドさんが単独で黒出しするには占い師を騙るしかない訳だ」
　サキリはヒューマからトワに視線を移し、ひゅっと首を狩るかのような仕草をした。
「現状で僕の吊り希望はトワだね。トワが吊られて屋敷野が生き残り朝にパンが焼ければ、僕の占いが正しいという確実な証明になるからだ」
「パン屋論争はー夜を超えたらわかるマス、ケードー。一度しかチャンスがないデスカラー、負け確定になるトワを吊って次占い師ーは全力で避けたいデス。吊られてもいいよ！　とはちょっと言えない感じするマス」
　トワの『パン屋論争』の言葉に、梢の視線が鋭くなる。
「私目線からすると、トワさんは黒確定。占い師は半々かなというところなんですけどー」
　するとトワは、クッキーを一口齧って、呆れたように肩を竦める。
「Dear me!　トワ視点から言えばコズエが黒確定ですケードー？」
「おやおや」
　今度は梢が肩を竦める番だ。

「トワさん、覚えてないんですか？　あの発言……妙でしたよ」
「あの発言？」
「トワさん、こういいましたよね。――『トワ以外の【パン屋】の対抗はいるんデス？』」
「言ったからなんデス？」
「真にパン屋なら、なぜパン屋に対抗が来るような言い回しを？　水守君、藤堂さん。パン屋に対抗が来るとは思いませんでしたよね？」
　梢は、黙って成り行きを見守っている流と静に問いかける。ふたりは特に答えなかったが、腕組みをし、グラスに口をつけながら、梢とトワのどちらを信じるべきか、見比べている様子だ。
　答えがないのを同意と受け取ったのか、梢は声のトーンを落とした。
「私も……だから、黙ってる気だったんですから。パン屋対抗が来るのは、村から見ればレアケース。いかにも、生贄狼目線な発言です」

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