久保田先生の女子力アップ大作戦！　着物編！｜リアクション

久保田先生の女子力アップ大作戦！　着物編！

　時間に余裕があるので、久保田先生は他の人ともお話してみたくなった。挨拶をしたい人もいる。久保田先生は紙コップの緑茶を飲んでいる和服とスーツの男性ふたり組に声をかけた。
「柏村さん、明智さん。お久しぶりです。くつろいでいますね」
「おや、先生」
　柏村文也が久保田先生を見上げる。寝癖のついた前髪の隙間から茶目っ気のある黒い瞳がのぞいていた。
「某は着付けのお手伝いで来ているからねえ。今の時間はこちらのお兄さんとのんびりしているってわけさ」
「ごきげんよう、美和さん。私は文也さんに着物についてご指導をいただいていたところです。ふふ……！」
　アケーチ・タッマーキの横には着物と帯が行儀よく畳まれている。察するに、着物の選び方などで文也に助言をもらっていたのだろう。
　久保田先生は文也が日常的に和服で過ごしているのは聞いていたが、タッマーキに関してはスーツ姿以外を見たことが無かった。
「明智さんも着物がお好きなんですか？」
「先日、袴をはく機会に恵まれましてね。せっかくですから着付けを習ってみたくなったのです。華やかで情緒と魅惑で溢れた世界……！　ご希望があれば、皆さんのメーキャップも担当いたしますよ……！」
「ん？　お兄さん、美容関係の人なの？」
「ええ！　美のために生きております！」
　文也の問いに、タッマーキはスーツのジャケットを羽を広げるような仕草でめくって見せる。裏地のポケットに化粧道具がびっしりと並んでいた。
「はぁー。変わったお兄さんだと思っていたけど、ここまでくると大したものだね」
　さっぱりとした声で告げると、文也は緑茶を一口すすった。
「で。先生は着物、決まったの？　手ぶらじゃないですか」
「あっ。そうだ、選んでいる途中なんでした！　また後でお話しましょ！」
「ええ。後ほど、ふふ……！」
「素敵な着物に出会えるといいね～」
　文也は飄々とした声を久保田先生の背中にかけて、にこりと目を細めた。

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