寝子島高校教員、
久保田 美和。28歳。
教え子たちのおかげで女子力を取り戻した独身女性だ。恋愛しては失敗を繰り返す人生を歩んできた。
同窓会用の服や髪形が決まってから、久保田先生の表情は目に見えて明るくなった。いや、以前から明るいのだが「魂のきらめき」とでも言うのだろうか。心の余裕が魅力となって周囲を自然と引き付けるようになった。
月曜日。少し汗ばむくらいの陽気の朝。
久保田先生は両手に授業用のプリントをたくさん持って、すれ違う生徒たちに挨拶をしながら教室に向かっていた。
「結ちゃんおはよー! 今日の羽織も素敵ね!」
陰のある少女・
黛 結に笑いかけると、結もこもったような声で
「……おはようございます」
と、挨拶を返した。
無表情でそっけない態度だが、内向的な性格のためこれが結のフツウである。結の性格を知っている久保田先生は結にも他の生徒と同じように雑談を始めた。
「ねえねえ、結ちゃんて反物が好きじゃない? 私、和装に興味があるんだけどいいイベントってないかなー」
唐突に話を振られて戸惑う結。緊張で視線が鋭くなってしまう。
「……旧市街で……有志による着付け教室があるそうです。うちの学校からも何人か参加するらしいですよ……」
服飾専攻のため関連するイベントの情報は自然と耳に入ってくる。その内のひとつを教えてあげると、久保田先生の声のトーンが少し高くなった。興味を持ったらしい。わかりやすい人である。
「へえ! 着付け、いいね! 私、着物持ってないけど大丈夫かな?」
「詳しいことはなんとも。初心者歓迎とあったのでどうにかなるんじゃないでしょうか……」
「そっか、ありがとう! ねっ、その着付け教室。結ちゃんは興味ない? 皆で行ったら楽しそうだなー」
まだ何も調べていないのに行く気満々の久保田先生。結はどうすればいいものか迷い、曖昧に首を振った。
「気が向けば……行くかもしれません」
「うんっ。気が向くのを楽しみにしてるっ」
無邪気の塊のような笑顔を向けられる。
(だれかと、かかわりたいけれど……)
授業に向かう久保田先生の背中を見て、そっと視線を落とした。
ボンソワール、相馬です。
ガイドでは黛 結さんにご登場いただきました!
今回、久保田先生が興味を持ったのは旧市街で行われる着付け教室です。
参道商店街付近の商工会議所で袷の着付けを習います。
この教室は旧市街に住む和服好きのおばあちゃんたちが
タンスに着物を眠らせるのはもったいないと趣味でやってるもののため
着物の貸出も授業料もすべて無料です。
老若男女問わずいろんな人が来てくれるのを待っているそうですよ!
教室では飲食OKです。着物でお茶会なんてのも素敵ですね。
久保田田先生は今回もこの着付け教室のことを喋りまくっています。
皆で目指そう、和装美人! ほしびとの参加も大歓迎です!