久保田先生の女子力アップ大作戦！　着物編！｜リアクション

久保田先生の女子力アップ大作戦！　着物編！

「仙藤紫です。夏に浴衣を着るくらいで着物を着た経験はあまりありません。基本的なことからしっかり覚えていきたいです。よろしくお願いいたします」
　落ち着いた口調で自己紹介をして紫が頭を下げると周囲から温かい拍手がこぼれる。全員の自己紹介が終わると、佐藤さんが「よっこいせ」と立ち上がり着付けの説明を始めた。
「今日は着物をあまり着たことがない子もたくさん来てくれたねぇ。今日は袷（あわせ）の着付けをお勉強するのだけれど、袷ってどういうものか知っている子はいるかねぇ」
　黛結の隣にいた久保田先生は視線を斜め上に向け、何もない天井を見つめた。
（わかりやすい人だな）
　八神修はそんな久保田先生を見て控えめに手をあげる。
「はい、そこのお兄さん」
「袷は裏地があります。あと、浴衣と違って下に長襦袢を着るのが特徴です」
「ありがとうねえ。今、言ってもらったとおりだよぉ。着物は季節によって裏地や下着で暑さを調整するんだねえ。着物は難しいって考える子が多いようだが、そんなこともないんだよ。
　じゃ、まずは何を着るかから決めようか。そこに積んであるやつから、好きな着物と帯を選んでねぇ。小物なんかは好きなのがあれば使ってねぇ」
　季節に合った柄だけ用意したので、好きな帯と着物を組み合わせれば問題ないらしい。それを聞いて着物初心者の綾辻綾花はホッと胸をなでおろした。
　女の子たちが嬉しそうに着物の周りに集まる。
　嬉しさを隠せない様子の椿美咲紀が鼻歌を歌いながら晴れた空の色を探す。
「本日のラッキーカラーは水色なのですよー。はぁぁ、アンティーク着物がこんなに……。鹿の子本絞りも王道でいいですねぇ、時期を考えると藤も捨てがたい」
「美咲紀ちゃん、慣れてるのね。すごい！　私、柄の名前とか全然わかんないよー」
　手放しで褒められ美咲紀が白い歯を見せる。
「実家が神社なので多少は心得があるのです。私でよければアドバイスさせてもらいますよー」
「ほんと？　じゃあ決められないときお願いしようかな！　そうそう、今日のスカート、この前ティアラでアドバイスしてもらったやつなの。結構好評なんだー。友達にも褒めて貰っちゃった！」
　パステルグリーンのスカートのすそを持ち上げ、久保田先生はやわらかく微笑んだ。

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