壁画通りを作ろう｜リアクション

壁画通りを作ろう

●コラボ壁画、完成！

　６人がそれぞれ描いた絵は完成したが、少しスペースが余ってしまう事態が起きた。
「……どうしよう」
　恵御納夏朝は、描きたいものをすべて描ききったので何を描けばいいのか思いつかない。
　それぞれ、思い思いの絵を描いたのにスペースが余ってしまったのは計算外としかいいようがない。
「一部だけ真っ白はつまんないね～」
『もうすこし、なにかかきたい』
　響タルトは味気なさを感じ、小山内海は、何かを描いてスペースを埋めたいと思った。

「こういうのはどうかな？」
　しばらくして、旅鴉月詠は「皆で協力して絵を描こう」と提案した。
　描こうと言い出したのは、昔の映画のオープニングであったライオンが吠えているようなイラストだった。
　ライオンをデフォルメタッチに描いた猫に変え、にゃおー！　と大きな声で鳴いているものにしたら面白いと思わないか？　と付け加えて。
「……面白そうね」
「そういうものもあってもいいね」
　幻想的タッチの絵の三宅葉月、自分の思いを描く志向の桜月は賛成した。
「……猫さんの絵……僕が描きたい……」
「僕も！」
　猫は任せて！　と猫は夏朝とタルトが力を合わせて描くことに。
『わたしは、ねこのなきごえをかくね』
　こんなのはどうかな？　とスケッチブックに鳴き声の文字のラフを描いて見せる。
「いいね。ヤッホー、と言っている感じの吹き出しもお願いしていいかな？」
『いいよ』
　海と月詠は、鳴き声の文字を考える。
「……私は、背景を描くことにするわ」
「私も手伝うよ」
　葉月と月は、猫の絵が完成したら合った背景を描くことに。

　日が暮れ始めたので、辺りは薄暗く。
　ペンライト等の灯りと目視で描けるうちに仕上げようと急ピッチで制作を。
「頑張っているようだな」
　乾いた場所が誰かのキャンバスになっているだろうと思った八神修が、カメラ片手に様子を見に来た。
「あともうひとつ描けば完成だよ」
　猫と同時進行で鳴き声を描いている月詠が言う。
「八神くん、暗くなる前に僕が描いた絵の写真撮って」
　猫のヒゲを描きながら、タルトはそれ以外のもね、と念を押す。
「響は色々描けるんだな。その猫も見栄えがする絵柄だし、仕草の見せ方も上手いなぁ」
　猫の絵に感心するが、タルトが描いたのはヒゲと猫の模様だけ。猫の本体を描いたのは夏朝だ。
　他のところに描いてある猫も、僕と恵御納さんが一緒に描いたんだよ、と解説を付け加え。
「恵御納と描いたのか。すごくいい猫だ」
　今描いているのは私達全員のコラボだよ、と月詠が仲間外れにしないでほしいという感じの口調で言う。
「そうなのか。それじゃあ、今描いている絵は、壁画を作った皆で仕上げたものと紹介するよ」
　修は『寝子高生、地域活動として壁画作成』という見出しで学校新聞にこの様子を載せたかった。

　壁画がすべて完成したのは、夕日が沈んだ頃だった。
　暗くては良い写真は撮れないと、描かれた絵が乾ききった頃合いを見て撮影することにした。
「この壁をバックに、落書きを消した人、壁画を描いた人全員が並んだ写真にしたいんだ。新聞の協力、頼む」

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