懐かしい遊びに触れてみよう｜リアクション

懐かしい遊びに触れてみよう

谷咲苺喜はふと通りかかった公園で、なにやら楽しげな声が聞こえ、足を止めた。
声のほうをみると、大人や子どもが一緒になって『お手玉』や『めんこ』で遊んでいる。

「あらやだ、楽しそうなことしてるわね。折角だから遊んでいきましょう」

公園へ足を踏み入れると、そのグループのほうへと歩きだした。

遠目ではわからなかったが『けん玉』や『コマ』など、色々なおもちゃが置かれている。
それらを皆楽しんでいるようだ。苺喜はその中からお手玉をとる。

「通っていた小学校にね、地区単位でご老人を呼んで、昔の遊びを教えてもらおうっていうイベントがあってね」
「そこでの定番がお手玉だったのよ。懐かしいわね」

そんな話をしながら、お手玉の感触を確かめる。
同じような経験をもつ人たちが、過去を思い出すように頷く。

「でもねそのときは、お手玉を作ることから始めたから、実際に遊んでみる時間っていうのがあんまり無くてね」
「上手になる前に、時間が終わっちゃったのよねぇ。懐かしいわ」

苺喜はお手玉を軽く握っては離す。
その重さを確かめると、さっそく挑戦する。

「お手玉は……２個！　３個なんていきなりできないわよ」

両手に１つずつ持って構える。
右手のお手玉を宙に投げ、その間に左手のを右手に移して、
そして宙に浮いたのを左手で受け取る。

……はずだったのだが、
右手に移したお手玉に気を取られて、宙に浮いたほうを左手で取り損ねてしまった。
何回か挑戦してみるが、どうにもうまくできない。

（ううう……数年ぶりにやってみたせいで、２個ですら全然うまくできない……）

次にお手玉に触るときには３つで、と思っていた苺喜。
２つでこの状況では３つは到底できないだろう。
悔しさから肩をがっつり落とす。

気を取り直して、次はめんこに挑戦する。

「めんこは初体験よ。でも遊び方くらいは知ってるわ」
「地面にたたきつけて、他の人のめんこを裏返したら勝ちなんでしょ？」
「漫画でみたことあるわ」

お手玉みたいに技術がいる遊びでもないし、気軽にできそうだと苺喜は考えた。
さっそくめんこで遊んでいるグループに混ざって、いざ勝負。

ぺしっ。ぺしっ。
めんこが地面を打つたび、小気味いい音が響く。
しかし、相手のめんこは全然裏返らない。

（う、裏返らない……！　なんで！？　おかしくない！？）
（もしかしてこれにも特別な技術があるの……！？）

苺喜が驚いている間に自分のめんこが裏返されていく。
気づけば、はじめに持っていためんこは全部相手のところへ行ってしまった。

（ううう、全然できないのも悔しい。負けず嫌いの血が騒ぐわ）

それから、相手にコツを教わりながら必死に取り組む。
めんこを打ち込む角度や、どこへ打ち込むかというコントロールが大事らしい。
そう簡単に身に付くものではないようだ。
それでも色々考えながら遊ぶうちに、なんとか相手のめんこを１枚裏返すことに成功した。
苺喜はその結果に満足そうに微笑んだ。

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