のんべえエアー注意報！｜リアクション

のんべえエアー注意報！

　いつも旧市街の人々に新鮮美味しいお野菜を提供してくれる宮祀青果店。
　その店内奥の、住居に続く出入口の近く。小さな丸椅子に戸惑いながら座る長身の成人男性と、甲斐甲斐しく応対する女子高生の姿があった。寝子高教師桐島義弘と、この店の孫娘で看板娘、宮祀智瑜だ。

　昼過ぎの客足がパタリとやむ時間帯。そこにふらりと新鮮野菜を求めて宮祀青果店に自炊王義弘がやってきた。
　智瑜の豊満な胸は思い切りときめいた。だって、絶賛片想い中の先生が来てくれたのだ。きっと、私とした指切りの約束を覚えていてくれたに違いない。厳しいことは言うけれど、本当はとても優しい人だから。
「義弘先生、いらっしゃいませ！」
　智瑜はとびきりの笑顔でお出迎え。そして今は暇だからと、智瑜は躊躇する義弘の背中を押して店の奥に座らせ、冷たい麦茶を出す事にした。春らしい暖かい陽気。歩けば少し汗ばむくらいの気候には、きっと麦茶がちょうど良い。
　ガラスコップに注がれたよく冷えた麦茶を義弘に差し出し、自分もコップを手にその向かいに座る。そして２人がそれをコクリと飲んだ時――のんべえエアーが吹き抜けた。

＊＊＊＊＊＊＊

（あれ……熱い）
　智瑜はぽーっとしながら瞬きした。冷たい麦茶を飲んだはずなのに、何で？
　でもその疑問も長く続かなかった。だって、体がふわふわして何だかとっても楽しいのだ。どうして楽しいかと言えば、そんなの決まってる。
「義弘先生！」
　智瑜は赤い顔で目の前の義弘にぎゅっと抱きついた。先生が傍にいてくれて、私が楽しくない訳ないじゃない！

　智瑜は頬を染め、甘えたの猫のように義弘に顔をスリスリと擦りつけた。先生、こんな事したら怒るかな？　でもいいの。怒ってる先生も、だーい好き！
　義弘の反応はない。智瑜はちょっと不安になって上目遣いに義弘を見上げた。
「先生、怒ってる……？　まだ帰らないですよね……？」
　義弘は、怒ってはいなかった。義弘は首まで真っ赤になりながら―――酔っ払っていた。

「マウスパッド……」
　義弘の口から小さく声が漏れた。そして「え？」と小首を傾げた智瑜をその据わった目でギン！　と睨むと、智瑜の両腕を掴み自分から引っぺがした。
「せ、先生？」
　義弘に掴まれ智瑜は身動きが取れない。義弘はそれに構わずまじまじと智瑜の胸を見た。
「何で私のマウスパッドがここにあるんだ……？」
　ぶつぶつと呟きながら智瑜の胸を凝視する義弘。智瑜は羞恥に身悶えた。
「せ、先生……」
「この計算された盛り上がり、全ての疲れを癒すような弾力……やはり素晴らしいおっぱいマウスパッド……」
　ぐいと智瑜の両手が引かれる。ああ、私とうとう先生に襲われるのねっと智瑜が期待しながらその瞳を閉じた時……ポテンと胸に何かが触れる感触がした。智瑜が怖々目を開くと。
「先生……？」
　義弘は智瑜の豊満な胸に顔を埋めながら、スースーと幸せそうに眠っていた。

　智瑜は義弘のその頭を、ぎゅっと抱きしめた。
　私も、先生もどうしちゃったのかな。でも私はどんな先生でもやっぱり。
「―――大好きです、義弘先生」
　智瑜は彼の耳元に、熱くそっと囁いた。

　その後智瑜は何とか義弘を奥に続く住居の方に引き摺ることに成功した。そこで智瑜も力尽き、２人は並んでしばらくお昼寝。
　起きたら智瑜の顔が目の前にある事に青くなった義弘に、智瑜は悪戯っぽく微笑んだ。
「おはようございます、義弘先生……また、お店に来てくださいねっ！」

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