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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
Gorilla～君が奏でるレクイエム
●アンリミテッドバナナワークス
――体はバナナで出来ている。血潮はＢ型で心は硝子。
――担い手はここに独り、密林の丘で胸を叩く。
厳密には特定の種のみであるが、ゴリラは全てＢ型であると言うのが通説である。あとその厳つい見た目に反し、彼らは非常に繊細であり――ストレスでお腹を下すことも多いのだそうだ。
と、そんなゴリラ豆知識は置いておいて、寝子島を歩いていた桃川 圭花は、一瞬の眩暈のあと不可思議な光景を目にしていた。
（ここは、一体……？）
春の気配が一気に遠ざかり、圭花の視界を埋め尽くすのは、何処までも続いていくような果て無き密林で。其処には鮮やかな黄色の果実――バナナが、まるで剣の如く無数に突き刺さっている。
――もしやこれは、自身の心象風景だとでも言うのか。確かにろっこんの能力を使えば、道具の分解や復元なども行うことが出来るが、バナナは無い。ありえない。て言うか自分は、こんな白昼夢を見る程にバナナが好きだっただろうか。
（……落ち着くのよ私。こんなフツウじゃない事態には慣れっこでしょ）
ツインテールの髪をぶんぶん揺らしながら、圭花はゆっくりと深呼吸をして――其処に空気を斬り裂くような勢いで、何かが飛来してきた。
――べしょ。
「え……ってちょお！？」
圭花の足元で弾けたのは、見た目にも瑞々しい茶色の物体――これはアレだ。昔畑の肥やしにしていたり、今は漢字ドリルで人気を博していたりする例のアレだ。
（最悪……）
直撃しなかったのが幸いだが、顔を歪める圭花の元へは「ウッホウッホ」とやる気満々の態度で、うんこを投擲してきたゴリラが近づいてくる。最悪すぎる攻撃を行った彼は、次は外さないとばかりに威嚇を行ってきて――実際、普通の人間であれば慌てて身を翻し、背中を向けて逃げ出していたのだろう。しかし。
「ナメないで。別にそんなん喰らったって、死にやしないじゃない」
そのゴリラの挑発は、負けず嫌いな圭花の心に火をつけた。逃げるくらいなら恥ずかしいことも行動に移してやる、と――一度決意すれば、彼女のウルトラ度胸はそう簡単に揺るがないのだ。
「ふふ、それに私はテレビの動物番組を見てよーく知ってるのよ。あなた達はほんとは、臆病な動物だってことをね」
――そう、過剰な威嚇は、相手に対する恐怖の裏返し。知恵あるゴリラはそれ故に、痛みを敏感に感じてしまうもの。だからこそ彼らは、再び人間に拒絶されることを恐れ、硝子の心を守る為に人間を遠ざけようとしているのだ。
「そういう訳で……とうっ」
威嚇には威嚇で対抗することにした圭花は、次の瞬間両手を思い切り上に突き上げて、自分の身体を大きく見せてゴリラに迫った。ワイルドになれ――けれど、チープなスリルに身を任せる必要は無い。己の武器は、何にも揺るがない度胸なのだから。
「ふっふっふ。大きいでしょ。あなた達とは首と背骨の構造が違うのよ」
「ウ……ウホホ……」
すごく……大きいです……と訴えるかのように、ゴリラの瞳が潤む。こうなるとウホウホ言っているのも意味深に思えてくるが、もう一押しだと圭花は集中していた。
（あと、この子達に通じそうなのは……）
威嚇の姿勢のまま、暫し見つめ合う圭花とゴリラ。と、何か閃いたのか、彼女はすぅっと大きく息を吸って――そして、おもむろに咆哮した。
「うほ――っ！！」
――何か大切なものを失った気がしたが、此処で止める訳にはいかない。諸刃の剣の如く、胸に手痛い喪失を抱え込んだ圭花であったが、すっかり委縮してしまったゴリラは戦意を失ったらしい。もう攻撃してくることも無いと確信した圭花は、其処でゆっくりと手を下ろす。
「あなた達は知らないかもしれないけど、和解って技術があるのよ、人間には。これからそれを学んでもらうわ」
あなた達ゴリラが、賢くて優しい動物だってことも知っている――そう言って握手の手を差し出した圭花を、ゴリラは縋るようなまなざしで見つめ、やがておずおずとその手を握り返してきた。ちなみにゴリラの握力は４００ｋｇあるとも言われているが、そこら辺はちゃんと空気を読んでいる。
「ウホ……」
「いい返事ね。そう、コツはね、３つあるの。諦めないこと、焦らないこと、自分から歩み寄ること……」
――其処は、もしかしたらあり得たかも知れない、もう一つの寝子島。それは、猫の代わりにゴリラが住むゴリ島であった。
人々との共存が叶わず孤島と化していた彼の島であったが、平行世界からの来訪者によって、彼らの抱える孤独は静かに癒されようとしている。
「原因はあなた達がゴリラだからじゃなくて、この島に私がいなかったことね」
そう自信たっぷりに断言する圭花の表情は、何処までも爽やかだった。
――体はバナナで出来ている。血潮はＢ型で心は硝子。
――担い手はここに独り、密林の丘で胸を叩く。
厳密には特定の種のみであるが、ゴリラは全てＢ型であると言うのが通説である。あとその厳つい見た目に反し、彼らは非常に繊細であり――ストレスでお腹を下すことも多いのだそうだ。
と、そんなゴリラ豆知識は置いておいて、寝子島を歩いていた桃川 圭花は、一瞬の眩暈のあと不可思議な光景を目にしていた。
（ここは、一体……？）
春の気配が一気に遠ざかり、圭花の視界を埋め尽くすのは、何処までも続いていくような果て無き密林で。其処には鮮やかな黄色の果実――バナナが、まるで剣の如く無数に突き刺さっている。
――もしやこれは、自身の心象風景だとでも言うのか。確かにろっこんの能力を使えば、道具の分解や復元なども行うことが出来るが、バナナは無い。ありえない。て言うか自分は、こんな白昼夢を見る程にバナナが好きだっただろうか。
（……落ち着くのよ私。こんなフツウじゃない事態には慣れっこでしょ）
ツインテールの髪をぶんぶん揺らしながら、圭花はゆっくりと深呼吸をして――其処に空気を斬り裂くような勢いで、何かが飛来してきた。
――べしょ。
「え……ってちょお！？」
圭花の足元で弾けたのは、見た目にも瑞々しい茶色の物体――これはアレだ。昔畑の肥やしにしていたり、今は漢字ドリルで人気を博していたりする例のアレだ。
（最悪……）
直撃しなかったのが幸いだが、顔を歪める圭花の元へは「ウッホウッホ」とやる気満々の態度で、うんこを投擲してきたゴリラが近づいてくる。最悪すぎる攻撃を行った彼は、次は外さないとばかりに威嚇を行ってきて――実際、普通の人間であれば慌てて身を翻し、背中を向けて逃げ出していたのだろう。しかし。
「ナメないで。別にそんなん喰らったって、死にやしないじゃない」
そのゴリラの挑発は、負けず嫌いな圭花の心に火をつけた。逃げるくらいなら恥ずかしいことも行動に移してやる、と――一度決意すれば、彼女のウルトラ度胸はそう簡単に揺るがないのだ。
「ふふ、それに私はテレビの動物番組を見てよーく知ってるのよ。あなた達はほんとは、臆病な動物だってことをね」
――そう、過剰な威嚇は、相手に対する恐怖の裏返し。知恵あるゴリラはそれ故に、痛みを敏感に感じてしまうもの。だからこそ彼らは、再び人間に拒絶されることを恐れ、硝子の心を守る為に人間を遠ざけようとしているのだ。
「そういう訳で……とうっ」
威嚇には威嚇で対抗することにした圭花は、次の瞬間両手を思い切り上に突き上げて、自分の身体を大きく見せてゴリラに迫った。ワイルドになれ――けれど、チープなスリルに身を任せる必要は無い。己の武器は、何にも揺るがない度胸なのだから。
「ふっふっふ。大きいでしょ。あなた達とは首と背骨の構造が違うのよ」
「ウ……ウホホ……」
すごく……大きいです……と訴えるかのように、ゴリラの瞳が潤む。こうなるとウホウホ言っているのも意味深に思えてくるが、もう一押しだと圭花は集中していた。
（あと、この子達に通じそうなのは……）
威嚇の姿勢のまま、暫し見つめ合う圭花とゴリラ。と、何か閃いたのか、彼女はすぅっと大きく息を吸って――そして、おもむろに咆哮した。
「うほ――っ！！」
――何か大切なものを失った気がしたが、此処で止める訳にはいかない。諸刃の剣の如く、胸に手痛い喪失を抱え込んだ圭花であったが、すっかり委縮してしまったゴリラは戦意を失ったらしい。もう攻撃してくることも無いと確信した圭花は、其処でゆっくりと手を下ろす。
「あなた達は知らないかもしれないけど、和解って技術があるのよ、人間には。これからそれを学んでもらうわ」
あなた達ゴリラが、賢くて優しい動物だってことも知っている――そう言って握手の手を差し出した圭花を、ゴリラは縋るようなまなざしで見つめ、やがておずおずとその手を握り返してきた。ちなみにゴリラの握力は４００ｋｇあるとも言われているが、そこら辺はちゃんと空気を読んでいる。
「ウホ……」
「いい返事ね。そう、コツはね、３つあるの。諦めないこと、焦らないこと、自分から歩み寄ること……」
――其処は、もしかしたらあり得たかも知れない、もう一つの寝子島。それは、猫の代わりにゴリラが住むゴリ島であった。
人々との共存が叶わず孤島と化していた彼の島であったが、平行世界からの来訪者によって、彼らの抱える孤独は静かに癒されようとしている。
「原因はあなた達がゴリラだからじゃなくて、この島に私がいなかったことね」
そう自信たっぷりに断言する圭花の表情は、何処までも爽やかだった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2017年06月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2017年06月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年06月29日 11時00分
