新年度のはじまりはじまり。体育科編｜リアクション

新年度のはじまりはじまり。体育科編

　～３年９組～

　新しいクラスに、わいわいと盛り上がる教室の中。そこへ担任の高野有紀が「カカカカ」と笑いながら入室してくる。
　高野先生の快活な笑い声を合図にして、生徒たちは各々の席についた。３年９組の自己紹介がはじまる。

「……ヨハン・プレストン。去年からここに転入してきました。国籍はアメリカ。よろしくお願いします」
　ヨハンが、淡々と自己紹介をしていた。どことなくミステリアスな雰囲気を放つ、無口なヨハンだが、それでいて重たい空気はない。
　そんなヨハンに興味を持ったのか、同じクラスの剣崎エレナが気さくに質問を投げかける。
「プレストンさんは、なにか動物を飼っているのかしら？」
「……犬とハムスターを」
「名前はなんて？」
「……ジョンとクラリックだ」
　言葉少なだが、話しかければ応えてくれるヨハン。その大物ミュージシャンのような風情に惹かれたエレナは質問をつづけていたが、そろそろタイムリミットとなったので、高野先生に止められた。
　時刻はお昼。
　武道場での、弁当タイムである。

　～武道場～

　腹が減っては戦はできぬとばかりに、武道場ではお弁当を持った生徒たちが集まっていた。
　音海なぎさが、さっそく持参したランチボックスを広げていると。
「おおー。うまそうじゃーん☆」
　志波武道が陽気な口調で話しかけ、なぎさのお昼ごはんを覗き込んだ。
　俵おにぎりに、玉子焼き、からあげ、ウインナー。彩りにブロッコリーをちょこっと。定番のおかずが可愛らしく盛り込まれた、食欲をそそるラインナップである。
「実は手作りなんだ」
「すげージャン！」
「よかったら、食べてみるかい」
「やったぜぃ！　けどさあ、本当にもらっちゃっていーの？」
　武道は、なぎさの弁当をあらためて見回す。量はそんなに多くない。
「そんなんで足りるワケ？」
「大丈夫だよ。少ない量でも、割りと満足するほうなんだ」
「そっ。なら、遠慮なくいただくぜぃ☆」
　いっただきまーす！　と元気よく言ってから、武道はからあげをひょいとつまんで、口に放り込んだ。満足そうにもぐもぐと頬張っている。
「うーん、うまいっ！　なぎさちゃん、料理上手だネ☆」
「喜んでもらえたなら、ボクもうれしいよ」
「あ、そうそう。俺たちさ、同じクラスになれたわけじゃん」
「そうだね」
「これからもよろしくなっ！」
「うん。こちらこそ、よろしくね」

　さっそく親睦を深めていく体育科の生徒たち。
　お腹も満たし、お弁当タイムが終わったところで、皆は旧市街の外れへと場所を移動する。
　本日のメインイベント――ボウリング大会が、間もなくはじまろうとしていた。