新年度のはじまりはじまり。体育科編｜リアクション

新年度のはじまりはじまり。体育科編

　～２年９組～

　クラス替え――といっても、体育科にはもともとクラスが二つしかない。そのため、新しい教室にも見知った顔が半分ほど混ざっている。
「２年生になっても、よろしくね」
　羽生碧南が、去年も同じクラスだった生徒たちに改めてあいさつを交わしていた。もちろん、新しく一緒になった生徒とも楽しげに交流している。
　おっとりとして人懐っこい微笑みをふりまく碧南だったが、教室に浅井幸太が入室したとたん、彼女の表情には弾けるような笑顔が浮かんだ。
「浅井先生、また一年よろしくお願いしまーす！」
「おー、羽生。よろしくな」
　幸太もまた朗らかな笑みを返して言う。去年に引き続いて、今年もまた浅井先生といっしょになれた――。そのことが碧南の胸を高鳴らせている。
「スポーツ推薦、頑張って狙っていけよ！　先生、応援してるからな！」
　今にもぼわっと燃え盛りそうな熱血ぶりで、幸太は碧南にガッツポーズをしてみせた。

　ちょっと室温が上がったような気のする教室で、クラスメート達の自己紹介が進んでいった。
　次は碧南の番だ。
「バスケ部に所属しています。一年生からレギュラーやってます！　ポジションはスモールフォワードで……」
　順調に自己紹介を進める碧南だったが、そんな彼女に親しい友人が突っ込みを入れる。
「趣味は乙女ゲームだよね！　時々、その世界にトリップしてる！」
「も、もうっ。いま言うことじゃないでしょっ！」
　思わず赤面してしまう碧南であった。

　碧南の自己紹介が終わると、つづいて陽気そうな男子生徒が立ち上がった。
「寝子島ゴールキーパー世界チャンピオンの鎌八まもるだ。スパィディーなウェスタン野郎、とでも覚えといてくれ」
　なかなか風変わりな言語感覚で自己アピールした後、まもるはウィンクをしてみせた。

「自分は……志波拓郎、だ」
　言葉をひとつひとつ確かめるように、拓郎が自己紹介していた。
「……よろしく」
　無難に自己紹介を終わらせた拓郎もまた、着席するやいなや、ウィンクをしてみせた。
「ふわあ……」
　と思いきや、片目をつむってあくびをしていただけだった。
　なんだか常に眠たそうにしている拓郎だが、果たして午後のボウリングを乗り切ることができるのだろうか。

このページにイラストを設定する