激しい雨は突然に｜リアクション

激しい雨は突然に

谷咲苺喜は星ヶ丘を中心に寝子島の探索に出かけていた。
その帰り道、突然雨が降ってきた。
すぐに駆け出すと近くにあった建物の軒下に駆け込む。
幸い、雨が酷くなる前に屋根のある場所に避難できたので、全身がひどく濡れることはなかった。
しかし着ていたスカートやストッキングは、雨でところどころ水玉模様に色が変わり、
カーディガンも微妙に湿ってしまっている。

（靴のなかに水が染み込むほど濡れてないのが、不幸中の幸いってやつかしら）

とはいえ、この事態にテンションは下がる一方だった。
ため息をつきながら、ふと建物のなかに視線を移すと、衣服がずらりと並んでいる。

「慌てて駆け込んだけど、ここブティックだったのね」

今度は外のほうを見る。雨はまだ止みそうにない。
それに濡れたまま帰るのは気分が良くない。

（ここで靴以外の上から下まで一通り買い揃えて着替えましょう）

そう決めると、店へと足を踏み入れた。

店員は苺喜を見かけると、すぐに近づいて声をかけてきた。
希望を伝えると、店員が何着か選び、試着室へと移動する。
それらを試着室内で鏡を見ながら、似合うかどうか何度も確認する。
最初の数着だけでなく、店員にさらに新しい服を持ってきてもらう。

「こっちのワンピースもいいわね。こっちのブラウスも素敵」
「折角だし、このへんも一通り買ってしまいましょう」

苺喜は、試着して気に入ったものをまとめて購入した。
満足な買い物ができて、店の外へ向かう足取りは軽かった。

空はもう晴れていて、水溜りだけが残っていた。

「さあ、帰りましょ」

そう思い、水溜りを避けて歩き出す。そのとき、自分の靴に目がいった。

「新しい服を買ったし、どうせなら靴も何足か新しいものが欲しいわね」
「ちょっと靴屋さんも覗いていこうかしら」

くるりと方向を変えて、苺喜は靴屋のほうへと歩き出した。

このページにイラストを設定する