PEEPING　GHOST！！｜リアクション

PEEPING　GHOST！！

●来島アカリの場合

■俺の話
　アカリたんハァハァ。

　俺は、死んだ。
　でも好都合なんだ。これで俺はずっとアカリたんの傍にいられる。

●アカリの話
（うー……なんかやな感じする……）
　来島アカリは自室で己の身を抱いた。
　ここ最近、妙に視線を感じて仕方がない。
（むー……）
　あたりを見回しても変わった様子はなさそうで。
　マンションの３階の部屋から見える景色もいつもと変わらない。
（もしかして……虫！？）
　大の虫嫌いであるアカリ、自室を恐る恐る調べるが、その気配はないようだ。
（気のせい、かな……）　
　とりあえず寝よう、とアカリは着ているものを脱ぎ、パジャマに手をかけた。

■俺の話
「アカリたんの生着替え！　ヒィヤッホーーウ！！」
　果たしてこれまでハイテンションな幽霊が存在しただろうか。
　着替え始めたアカリを中心として、その周りを男はグルグルと踊り回っていた。

　華奢で白い身体、女性と見間違うほどの愛らしい顔。どこか不安げに眉を寄せた表情は守ってあげたくなる程の萌えの極致。
「俺、死んで良かったあああああ！！！」
　ガッツポーズする霊に、突如子猫の唸り声が響く。
　アカリが飼っているサバトラの愛らしいオスの子猫だ。
「おや、猫ちゃん。俺は怪しいものじゃないですよー」
　甘い声を出してみるも、子猫の目は鋭く男を射抜き。ウニャッ！　と猫パンチ！
「い、痛気持ちィ！」
　ダメだこいつ。
　　
●アカリの話
「……ウィル？　どうかした？」
　着替え終えたアカリが愛猫ウィルの名を呼ぶ。
　だが、愛猫はウィルという名前を持ちながら『うどん』と呼ばないと返事をしてくれない困ったちゃん。
　ウィルは何もない空間に向かって唸り、猫パンチを繰り出していた。

　―猫には、人間には見えない者が見えるという―
　そんな都市伝説を思い出し、アカリはウィルを後ろから抱き抱えた。若干涙目になりながら。
「大丈夫だって、何もいねーから。ほら、寝るぞー」
　ウィルと共にベッドに滑り込むアカリ。
「大丈夫、何も怖くないぞー、全然怖くねーぞ、なーウィルー」
　相変わらずウィルは名前をガン無視しながら、仲良く夢の世界へと逃避した。

　明け方。
「んーー、今何時だ……？」
　気配を感じ、モゾモゾとアカリが起き出した。頬をペロペロされているような感覚。
「むー……やめろよ、ウィル……」
　寝ぼけ眼のまま、アカリは腕に収まる愛猫を撫でようとした。
　が、大きさと感触がおかしい。
　瞼を開くと、舌を出した知らない男。
「あ、どうも」
「ぎ、ぎいいやあああああ！！！！」
　その後のアカリの行動の早さは音速を超えていた。光速だ。
　知らない男を蹴り出し、その勢いで起床。
　バババッと身支度を整え
「ひ、人の居る所に……！」
　ウィルを猫用バッグに入れ込み、アカリは一目散に部屋を出た。
「あぁあ、まだ気配がする……！」
（待ってぇー、アカリたぁあん！）

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