ドキドキワクワク☆2人きりの校内探索｜リアクション

ドキドキワクワク☆2人きりの校内探索

・アントニオン・モライシュの場合

「よォ、秋風、蕎麦っち！」
　2年教室そばの廊下に友人たちの姿を見つけ、アントニオン・モライシュは彼らのもとに駆け寄った。
「遅かったじゃんかよ、アントン。もしかして熊先生にでも見つかって説教されてたんじゃないだろうな」
「ヘヘエー！　そんなわけねぇだろ、秋風。俺のとこは大成功だったぜ！　なんせ驚かすだけじゃなく、ペアの仲を進展させるって愛のキューピッド役もこなしてきちまったからなァ！」
「おっ、お前もかよ。実は俺が驚かしたペアも、なんかいい感じの2人でさ。まいったぜ、まったく」
「蕎麦っちは？」
「俺のとこは女の子同士のペアだった。すげぇ可愛かったぜ、2人とも。お前たちにも見せたかったよ。あの子たちが驚く姿を」
「ふーん。それは是非、私も見たかったわねぇ」
「だろ。俺的には特にスケッチブック持った小さい子が……ん、私……？」
　蕎麦人が怪訝な顔をして、あらぬ方向を見る。つられて、アントニオンもそっちに視線を向けた。
「うぉっ！」
「鴻上ちゃん！」
「なんでここにィ！？」
　透、蕎麦人、自分の順に出た言葉が見事に文章となる。
　そう。視線を向けた先にいたのは、鴻上優梨乃だった。表情には笑顔を浮かべ、しかし明らかにその笑みは引きつっている。
　こいつはやべェと、その笑みを見た瞬間に思った。ていうかこえェ。
「姿が見えないからどこを見回っているのかと思えば、3人ともそんなことしてたんだぁ。ふーん」
「い、いや、鴻上ちゃん。これは違うんだ。俺たちはよかれと思って」
「そ、そうそう。蕎麦人の言う通り、俺たちは可愛い後輩たちを楽しませてやろうと思ったんだよ」
「う、嘘じゃねぇぜ。実際、オイラなんてキューピット役を」
　その時、視界の端で誰かの人影がこっちに歩いてくるのが見えた。
　反射的にそちらを見やる。途端、視線が固まった。
　げっ、という透の声がそばから聞こえた。マジかよ、という蕎麦人の声も。
　見えた人影。それはまぎれもなく、吉田熊吉先生のものだった。
（おいおい、なんてタイミングで来やがるんだよ熊先生！　こんなん最悪な展開じゃねぇかァ！）
「あっ、吉田先生、いいところに。ちょっとお話があるんですが」
「話？　なんだ？」
「実はですね」
「……ほぉー。お前ら、後輩の手伝いをしたいとか言っておいて、そんなことしてたのか」
「ち、違うんですよ、熊先生。俺たちは可愛い後輩の」
「黙れ、この阿呆どもが！　掃除をさぼってあろうことか下級生に悪戯を仕掛けるとは！　そんなに罰が欲しいのならくれてやる！　3人ともこれから1週間、校内の全トイレを毎日掃除だ！　今度は何を言っても騙されんからな、覚悟しろ！」　　
　透の言葉もむなしく、言い渡される残酷な刑罰。
「一週間って……」
「マジかよぉ……」
「o destino（なんてこった）……」
　後輩に愛の素晴らしさを伝えたはずのキューピッドに待っていたのが、まさかこんな結末だなんて。
　まったく世知辛い世の中だぜェと、そばにいる透と蕎麦人とともに肩をがっくりとうなだらせながら、アントニオンはそう思った。

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あとがき

担当マスター：北見直弥
ファンレターはマスターページから！

皆様、お疲れ様でした。ゲームマスターの北見です。
校内探索イベント、おかげさまで無事完結することができました。いかがでしたでしょうか？
こちらとしましては、皆様のキャラクター愛あふれるアクションのおかげもあり、大変楽しく書かせていただきました。
皆様にも楽しんでいただけたなら幸いです。

それでは、また何かご縁がありましたらよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。

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