『あなたも猫カフェ』においでませ｜リアクション

『あなたも猫カフェ』においでませ

　夏朝と修は、猫たちと遊ぶため、フリースペースに行くという美咲紀と別れ、食事メインのテーブル席へと向かった。
　行く途中、トワが猫たち相手に、元気に遊んでいるのが見える。
「ライトフェロゥさん、頑張ってるな」
　言いつつも、修が足を止められなかったのは、彼らをハチワレ猫が案内していたからだ。
　二人が椅子に座るのを待って、ハチワレはキッチンの方へと向かっていく。
「あの猫は、ウエイターのつもりなのか？」
「えっ、ウエイターって……オスってわかったの？　こんなちょっと見ただけなのに？　さすが八神君」
　夏朝は驚きながら、テーブルの上のメニューを引き寄せた。
　と、隣にやってきたのが、流と陽毬の二人組である。
「あ、水守君！」
　夏朝はすぐ近くの席に腰かけた流に、ひらひらと手を振った。
「恵御納も来てたのか。なあ、お勧めのメニューってあるか？」
「僕達も今来たばっかなんだ」
　ね、と修を見る夏朝。
「そっか、恵御納なら詳しそうだと思ったんだけど」
　流はメニューを引き寄せ、しばらく眺めた後に、陽毬に視線を向けた。
「俺はオープンサンドにするけど本居は何にする？　招待した手前一つくらいなら奢るぜー」
　その発言に、陽毬の目がきらりと輝く。
「えっ、いいの？　じゃあ店員さん、これ上から全部ください！」
「おい、俺一つって言っただろ～」
「え～、でもこれ選ぶの難しいんだもんっ」
　陽毬が、ぷうと頬を脹らめる。
　それに同意するように、テーブルの上に「にゃあん」と黒猫が現れた。
「あ、ねこ！」
　陽毬は思わず手を伸ばそうとし、はたとそれを止める。
「に、逃げないかな」
「大丈夫だろ、こいつは懐っこそうだ」
　言って流が、黒猫に手を伸ばした――そのとき。
「わっ！」
「おおっ！」
　夏朝と修がともに叫んだ。
　それもそのはず。彼らは突然、三匹の猫に囲まれていたのだ。
　一匹目は、テーブルの上にたしり、と飛び乗り。
　二匹目は、子猫が夏朝の足元をよじ登っている。
　そして三匹目は、壁に設置のキャットウォークから、修の背中に着地した。
「どこから来るんだ、お前はっ」
　修はとっさに、料理がのったお皿を持ち上げ、猫から離した。
　しかしそこに背中の猫が、ぐいっと顔を近つける。
「こら、だめだって。これは人間用だ」
「ごめんね…君達用の美味しい物は、別に頼むから…！」
　夏朝が修の上の猫を抱きあげ、壁に貼ってある猫用メニューの張り紙に目を向ける。
「えっと、何がいいかなあ」
「1つずつ取って、色々楽しんでもらおうか。とりあえず早く頼まないと、俺が危ない……わあっ」
「えっ？」
　夏朝はメニューから、隣の修へと視線を移す……と、そこには、また新たな猫を背中にのせた修がいた。
　しかも今度はちょっとぽっちゃりした猫ちゃんだ。
「あー、重いね、その子」
　笑いつつ、夏朝はささみこを、修はまぐろんを注文した。