『あなたも猫カフェ』においでませ｜リアクション

『あなたも猫カフェ』においでませ

　賑やかなお客をどんどん受け入れる『あなたも猫カフェ』
　その入口で、真境名アリサが選んだのは、白の猫耳、猫尻尾だった。
「ふにゃ、にゃっ」
　まるで「似合ってますよ。お友達ですか？」というように、キジトラ子猫が寄ってくる。
「あーかわいい！」
　もふもふの小さな体を抱きあげ、アリサは顔を近づけた。
　子猫の小さな手が、アリサの手の甲を、たしたしと叩く。
　同時に揺れる、キジトラ尻尾。
「みあ、みあっ」
　小さな口を精一杯開けて鳴く声は、「いらっしゃい」なのか「おつかれさま」なのか。
　それとも「おなかすいた」なのか。
　足元では、子猫の母親キジトラママが、大きな目でくりくり見上げていた。
「なにこの子たち親子なの？　……かわいいなあ」
　ここ最近、アリサの仕事は多忙を極めている。
（こんなにほっこりした気持ちになったのは久しぶり……）
　二匹の猫の癒しオーラに、アリサはほうっと息をつく。

　そこに、トワ・E・ライトフェロゥが賑やかにやって来た。
「トワもまほーしょーじょ、じゃなかった。White Catになるマス！」
　彼女はそう言って、白い猫耳を頭につける。
「まほーしょーじょ、一緒です、cat！」
　大きな声で言うトワを、アリサはくすくす笑いながら見下ろした。
「Why？　笑う、どうしてデス？」
　首を傾げるトワに。
「これ、お揃い」
　アリサは、自身がつけている白猫耳と、トワがつけている白猫耳を順に指してみせる。
「ホントデス！」
　青い目を見開いて、トワはアリサを見上げた。
「お揃い、うれしいデス！」
　トワはその場でくるりとターンをしてから、元気よく店内奥へと進んでいった。
　そのままの勢いで、手を伸ばす相手は、部屋の真ん中にいるサバトラちゃんである。
「手をネコにーナメラレル―と良い事あるデス？　トワもネコになまら……ならめ……なめねこたいデス！」
　サバトラは、トワの手をくんくん嗅いだ。
　けれども、すぐにぷいっと顔を背けてしまう。
　トワは大きな目をぱちぱち瞬いた。
　そっぽを向いても逃げないサバトラちゃんをじいと見る。
「challenge！　デスケドー、なめねこるには仲良くなるがイイと思うマス！」
「んなー」
　まるで同意を示すように、すぐ近くで灰猫ちゃんが鳴く。
　でも鳴いたにもかかわらず、灰猫はお尻をふりふり、どこかへ行ってしまった。
「ちょっとかなしい、デス」
　ただ、サバトラちゃんは逃げていない。
「まずはナカマ―。ようこそねこカフェフレンズ作戦なのデス」
　トワはサバトラちゃんに背を向けた。
「きじトラーキジトラー。トワにも今はー耳と尻尾があるマスカラ、トワはキジトラのフレンズデスヨー」
　腰をひねって猫を見て、猫耳猫尻尾を、ふりふりふり～。
　サバトラはきょとんと首を傾げただけだ。
　それもそのはず、似て非なるもの、サバとキジ。
　そこに「なあ～ん」と鳴き声が。
　キジトラ一家のパパさんが、呼ばれたと思ってやってきたのだ。
「オー、あたらしいねこちゃんデス？　ここ来たの、良い子なのデス」
　トワはキジトラパパの頭をふわりと撫ぜた。
　柔らかい毛並みは温かくて、思わずにっこり笑顔になる。
「さー手をなめねこるのデス……」
　小さな手を、そっと差し出すトワ。
　キジトラパパは、それをくんと嗅いで、口を開け――。
「なあああん」
　なんと、背後のサバトラちゃんに飛びかかられて、逃げてしまった。
「ねこ、サン！」
　トワが大きな声を出す。
「ヒドイ、デス！　なめねこれないデス！　トワは、なめねこれたいデス！」