眠れぬ夜はどう過ごす？｜リアクション

眠れぬ夜はどう過ごす？

星ヶ丘寮の自室で桜月は目を覚ました。
といっても朝日が昇ったわけではない。むしろ逆。真夜中である。

「……目が冴えて眠れないな」

いつもならデザインを描くところだが、
今日は昼の間に集中して描いていたせいかその気にならない。
本を読もうと本棚に手を伸ばし読み始める。

しかし数ページ進めたところですぐ閉じてしまった。
周りの静けさが妙に気になって集中できない。

「ん～、ゲームやろうかな」

ゆっくりと体を起こし、ゲーム機の前まで移動するとそれを起動する。
ランプが点灯し、しばらくするとモニタにログイン画面が表示される。

「ネットゲームは２４時間誰かしらいるからいいよね」

月はそう呟いた。
ヘッドホンを装着し、ログインを済ませると知り合いに軽く挨拶。

チャットで話をしながら、
耳に届く音楽とリズムに意識を乗せて、どこまでも続くフィールドを駆け巡る。
時折敵と遭遇するが、剣を握り、巧みな操作で倒していく。

「運動が苦手だからね、ゲームの中くらいは活発に動きたい」

敵をほどほどに倒しつつ、資源スポットである森を目指す。
到着したら素材を採取。川にも立ち寄って釣りを行う。
そうして生産系の材料を沢山集める。
アイテムボックスがいっぱいになったところで、街にある自分の部屋へと戻る。

生産キットを整えるとアイテム生産に取り掛かる。

集めてきた素材から糸を作って、その糸から布を、そして布から服を作っていく。
月はそれらの作業を楽しそうに進める。

「こういうゲームだとリアルではありえないような服がたくさん作れるから面白い」

服本体のシルエットがおおよそ決まったら、アクセサリーの選定や染色を行う。
それらを組み合わせて全体のバランスを見ながら形を整えていく。

「こういうのって、デザイナーさんの努力というかアイデアが色々と見られるんだよね」

服飾のデザインというのはなかなかに難しい。
普段何気なく着ているシャツ１つ取っても、様々なことを考えて作られている。

月は画面に映し出される装飾アイテムを眺める。
ゲームだから、中には現実だと難しいものもあるが、
服は全身のシルエットが映えるようにできているし、
アクセサリーは雰囲気作りやアクセントに一役買うようにうまくデザインされている。
月はそれらを自分のキャラクターに着せられるから、デザインの参考になると考えている。

そうこうしている内に、服の制作が完了した。

「この服はちょっと、というか随分派手だ。実際に着るのは勇気がいるな」

出来上がったものをキャラクターに着せて色々な角度から眺める。
色合いやアクセサリーの組み合わせは問題ないのだが、
街中でこの姿をしている人がいたら思わず目で追ってしまうだろう。

「そうだ、モデルの彼女に着てもらおうか」

メイドで友人でもあるその人物が着ているのを思い浮かべる。
きっと恥ずかしがるだろうけれど、それがまた可愛い。
月はその光景を思い描きながら、楽しそうに微笑んだ。

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