猫「占い」！―未来とは何か？―｜リアクション

猫「占い」！―未来とは何か？―

　椿美咲紀は占い好きである。
　朝のTVの占いコーナは必ずチェックするし、今日のラッキカラーは……と、占いで行動を決めることも。
　そんな彼女だったので、島で噂になっているNの店を訪れたのは、なんの不思議もないことだった。

「４月から寝子高２年生になるんです」

　椿は切り出した。

「１年生のときは色々あったけど、楽しく過ごせたのです。でも、２年生からクラス替えもあるし、ダイジョーブかな、とやっぱり心配なのですよ」

　と、新年度への不安を口にする。
　続けて、

「４月からも楽しく学校生活を送れるかな？　新入生たちの反応も気になるのです。いい先輩になれるかなー？」

　と相談した。
　Nは――。

「それでは、４月からの総合運を占ってみましょう。一枚カードを抜いて下さい」

　差し出されたカードの束から、椿は一枚を抜き取ってNに渡した。
　Nはしばらく考え込んでいたようだが、やがて口を開いた。

「まず、貴方を猫で例えると、ロシアンブルーですね」

　ロシアンブルーは、銀色に輝くブルーの被毛が特徴的な猫種である。

「目立つつもりはなくても、その存在感が注目を浴びるカリスマ性がある猫です。新しい環境や人との出会いを広げるというより、出会った環境や人とのつながりを深めたいと考える人ではないでしょうか」

　カリスマ、と言われて、ちょっと面映い椿である。

「人望のある猫ですから、新入生さんたちとの関係も期待できるでしょう。きっと思っている以上に先行きは明るいですよ」
「わー」

　明るい展望に、気分も上向く。

「４月からの新生活も、いい意味で変化がありそうですね。予想外の展開ではあるかもしれませんが、いいニュースがありそうです。猫も歩けばメザシに当たるといいますし」
「わーい、やったー」

　そんな格言あっただろうか、などとは思わずに素直に喜ぶ椿である。

「大丈夫だと思っていましたけど、後押ししてもらえると嬉しいのです」

　でも、天狗にはならないように、と自分を戒める椿。
　油断大敵、謙虚な姿勢も忘れずに、４月からも頑張ろう、と心持ちを定める。

「気をつけたほうがいいこととか、コレすると更に運気が上がるってアドバイスあったら教えて欲しいのです！」
「そうですね。同性・異性問わず、常に周りから注目されるモテる猫ですが、高嶺の存在となりがちなので、そこは気をつけたほうがいいでしょうね」

　高嶺の存在、とはまた持ち上げられすぎな気がしたが、心に止めておこう、と椿は思った。

「何かチャームっぽい品物があったら欲しいですよー。それか困った時に気を落ち着けるおまじないとかあったら教えてほしいのですよー」
「それでしたら、ちょうどいいものがありますよ」

　Ｎが取り出したのはロシアンブルーのディフォルメチャームだった。

「気持ちが乱れたら、これに触れて深呼吸を３回。そしてにゃんにゃんにゃん、と心のなかで唱えて下さい。気分が落ち着くはずです」
「わー、可愛いのですよー」

　好感触の結果と可愛い開運グッズを得て、椿はスキップしながら店を後にした。

（あのお店、新聞のネタにならないかな？）

　などと考えながら。
　