猫「占い」！―未来とは何か？―｜リアクション

猫「占い」！―未来とは何か？―

（猫占い？　なにそれ面白そう）

　Ｎの店の近くを通りかかった谷咲桃笑は、せっかくだし、と占って貰うことに決めた。

　占ってもらおうと思ったのは、４月からの新しい学校生活全般についてである。
　今の谷咲は顔良し、スタイル良しのいかにもモテそうな女性だが、彼女の中学時代は、あまり楽しいものではなかった。
　体型も今よりずっと太っていて、お洒落なんかしても無駄だ、と思い込んでいたし、いっそ逆に見苦しくなるとすら思っていた。
　それゆえ、見た目も冴えなかったし、すごく卑屈で僻みっぽくて。

　友達も少なかった。
　恋人なんてもってのほかだった。

　そんな自分を変えたくて、彼女は必死でダイエットをしたし、中学時代の知り合いは誰もいない学校に行って、高校デビューするのだと心に決めていた。
　以上が、彼女が寝子高にやって来た経緯である。

　唯一の誤算は、姉が一緒についてきてしまったことであろうか。
　優秀な姉は、幼い頃からのコンプレックスなのである。

「友達はいっぱいできるかな。あと……こここここ恋人とか、そういう……あっ、ちょ、な、なんだか恥ずかしい！」
「ふふ、分かりました。それではこの中から一枚カードを抜いて下さい」

　Ｎに促され、一枚を抜き取って渡す。
　Ｎはしばしの間それを眺めて何事か考えているようだった。
　そして――。

「あなたを猫で例えると、アメリカンショートヘアですね」

　タビー模様が魅力のアメショは、日本でももうすっかりおなじみの猫である。

「あまり目立つタイプではないけれど、存在感のあるタイプ。周りの人たちからは、頼りになる人として信頼を集めるでしょう」

　これはなかなかなの好感触では、と谷咲は少し嬉しくなった。

「４月からの新生活、高校デビューはとても上手くいく、と出ていますね。猫のように機敏に動く未来が見えます」

　そこまで行ってＮは、ただ、と付け足した。

「賢い猫なので、大勢で行動すると自分のペースが乱されてストレスがたまるかもしれません。友だちを沢山作るのはいいですが、上手に付き合っていく必要がありそうですね」
「う……」

　まだ人付き合いの経験が浅い谷咲は、そうかもしれない、と思った。

「アドバイスとしては、一人の時間を持つことです。ストレスを溜めてしまうと、暴飲暴食に走るタイプが多いんです。アメショタイプは、どちらかと言えばふくよかな体型の人が多いんですよ」
「！」

　これは気をつけなければ、と谷咲は肝に銘じた。

「でも、繰り返しになりますが、高校デビューは上手く行きますよ。まさに今が行動を起こす時、です。恋人、出来るといいですね」
「うんうんうん！　これよこれ！　こういう結果を待ってたの！」

　４月からの新生活がとても楽しみになってきた谷崎である。

「ありがとう！　高校デビューうまくいくように祈ってて！」
「はい。どうか楽しい学校生活が送れますように」

　店を出た彼女の表情は、とても晴れやかなものだった。
　鼻歌を歌いながら、谷咲は家路についた。