猫「占い」！―未来とは何か？―｜リアクション

猫「占い」！―未来とは何か？―

　八神修は猫好きである。
　家でも沢山の猫を飼っており、とても大切にしている。

（そしたら「猫」占いってあるじゃないか）

　そんな彼が興味を持たない訳がなかった。
　どんな占いなんだろう、と店に足を踏み入れる。

「こんにちは」
「いらっしゃいませ」

　しばし、歓談する２人。
　八神は占いの方法や占い師本人にも興味を持っていたため、すぐには占ってもらわず、じっくりと会話を楽しんでいた。
　ひとしきり話した後、ではそろそろ、ということで占いに入る。

「何を占いましょうか？」
「学業運を。丁度、年度が変わる時期ですしね。総合運も考えたんですが、ここは焦点を絞りたくて」

　学生の本分だしな、と八神は考えた。
　彼自身、勉強は好きであったし、成績も問題はない。
　でも、慢心せずに専心したいと考えている。
　日々の努力も怠っていない。
　それでも、何か落とし穴もあるかもしれない、と思ったのだ。

（占いはカウンセリングだとも思うしな）

　実際、占いというのは、占い師が一方的に結果を告げるものではない。
　客から話を聞き、様々な情報を引き出した上で、それと占いの結果を勘案して結果を告げるのが、腕の良い占い師なのである。

　閑話休題。

　Ｎが差し出したカードの束から、八神は一枚を引いてＮに手渡す。
　Ｎはカードを無言で眺めていたが、やがて口を開いた。

「まず、あなたを猫で例えると、ラグドールですね」

　長いふわふわの毛が特徴の猫、ラグドールは、おとなしくじっとしていることが多いことから「ぬいぐるみ」という意味で、この名前がつけられたといわれている。
　八神は自身の持つ猫図鑑を思い返し、ああ、あの猫か、と思い当たる。
　愛くるしい姿を思い出して少し和んだ。

「ラグドールタイプのあなたは、忍耐強く、冷静で、大らかな性格の持ち主です。目標を掲げると、困難なことが立ちはだかっても、途中で投げ出すことなく、忍耐強く、目標達成まで努力する人です。どちらかと言えば、努力する姿を人に見せず、静かに穏やかに実力をつけていくタイプで、周りの人から信頼されるでしょう」

　褒め言葉に少し照れる八神。

「ただ、学業には大きな不運の兆しが見えます。誘惑や堕落など、あなたの心を乱す出来事が起こるかもしれません。猫は気が多いものです。誘惑には気をつけて」

　思いの外強い凶兆の言葉に、八神は一瞬どきりとしたが、冷静沈着を旨とする彼は、すぐに自分を立て直した。
　そういうこともあるかもな、とふんわり受け止める。

「あなたは良くも悪くも不思議な出来事に縁があるようです。それが妨げになるかも」

　それを聞いて、八神はやはりなと思った。
　自身の普段の勉学の取り組み具合からいって、妨げになるとしたら、習熟度以外のことだろう、と予想していたのだ。

「それからどうやって自分を守ったらいいでしょうか？」
「興味があることには、たとえ一人でもとことん集中し、極めていくこと、でしょうか。落ち込みすぎないで下さいね。極めるモノによってはその道のプロになる可能性もありますよ」

　対策と回復の展望についても教えてくれたＮに、八神は感謝の意を表した。
　占い師との会話は思いの外楽しく、八神はもっと話していたかったが、次の客が来ている気配を感じたので、席を辞して店を後にした。

「凄く参考になりました。ありがとう」

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