猫「占い」！―未来とは何か？―｜リアクション

猫「占い」！―未来とは何か？―

　大学入学の準備をすっかり終えて、後はのんびり入学式までの日々を過ごすのみの仙藤紫。
　そんな彼女が、出先で偶然見つけたのが「猫占い」の店だった。

（占い、か……）

　普段はあまり関心のない仙藤だったが、この日に限ってはなぜか心惹かれるものを感じ、足を止めて中へと入ってみた。
　あくまで気まぐれ、である。

「いらっしゃいませ」

　Ｎと名乗ったその占い師に概略を説明され、一つ試してみようという気になった。

（さて……何を占って貰おうか）

　意外にこれといったものが思い浮かばない。
　それは大学入試という一つの山を超え、仙藤の生活が安定している証左かもしれない。
　恋愛運については、去年の夏休みに失恋を経験したので、少なくとも１年はフリーでいたい気分の仙藤。
　でも――。

「恋愛運について、お願いできますか」

　大学で新しい出会いがあるのかどうか。
　それだけ占ってもらおうと決める。

　Ｎの差し出したカードの束から１枚を抜き取る。
　仙藤からカードを受け劣ったＮは、しばし黙考したあと口を開いた。

「あなたは猫で例えるとオシキャットですね」

　オシキャットはヒョウ柄の毛が特徴の猫種である。

「オシキャットタイプのあなたは、一言でいえば秀才タイプ。でも、真面目な堅物というイメージはなく、誰に対しても穏やかに接します」

　まずまずの好感触に、仙藤は胸をなでおろす。

「恋愛についてですが、刺激よりも安定を求めるタイプです。相手に向上心と自立心を求め、互いに高めあえる関係を望みます。終始べたべたと一緒にいることは少なく、どちらかと言えばあっさりとした恋愛やプラトニックラブを求める傾向にあるかも」

　これについてはそうかもなあ、という程度の感想を持つ仙藤。
　頷いて、続きを促す。

「大学での出会いはやや期待薄かもしれませんね。独身主義の一匹猫の兆候がみられます」
「……まあ、そんなものよね」

　出会いがないならないで、それはそれで悪くないかも、と考える仙藤が、僅かに苦笑して終わらせようとすると、Ｎは――。

「ただ、今まで見えなかった状況が見えてくるとも出ています。猫のように好奇心旺盛に、アンテナを高くしていれば、充実したキャンパスライフが送れると思いますよ。出会いも、諦めるほどではありません」
「そう……だとしても、どんな人に出会いそうなのかは聞かないでおくわ。だって、出逢う前にその人のことを知るなんて、興ざめでしょ？」
「ふふ、素敵な恋愛観をお持ちですね」

　誰も彼もが、詳しく未来を知りたいと思う訳ではない。
　未来は不確かなもの、だからこそ面白い、という考え方だってあるのだ。

「未来の不確定さを楽しむことを、あなたはご存知なのですね」

　そういったＮに仙藤は笑顔で頷くのだった。