猫「占い」！―未来とは何か？―｜リアクション

猫「占い」！―未来とは何か？―

　シオ・レイゼルオークが来店したのは、なんとなく何かに惹かれたからだった。

「いらっしゃいませ」

　シオは店内の雰囲気を軽く見渡して、何かのご縁ですね、ととりあえず世間話でもしてみる。

　Ｎは占いをせずとも話せる人のようだった。
　相手の言葉を引き出すような話術は、さすが占い師といったところだろうか。

　ひとしきり話した後、シオは考える。
　占い抜き、会話だけなつもりでいたけれど、知ることで、意識することで軽減出来ることもあるかと思い始めた。
　自分でも気を付けているけれど、他者からの視点で気をつけるべきことに耳を傾けられたら、と。

　自分が難物の自覚は一応ある。
　シオは人間関係で、ポイントとアドバイスを貰うことにした。
　Ｎの差し出したカードの束から一枚を抜き取る。

　受け取ったＮの気配が一瞬張りつめたような気がした。

「まず……あなたを猫に例えると、ベンガルですね」

　ここは綾辻と一緒である。
　だが、その語り方は綾辻のときと少し違った。

「人に対して攻撃的になることはありませんが、警戒心が強いので、初対面の人や、慣れない場所では落ち着かずストレスを溜めてしまう傾向にあるのではないでしょうか。ご自分では自分はちゃらんぽらんだとか思っていらっしゃいません？　そんなことはないですよ？」

　シオは少し驚いた。
　彼女は自分のことを外見はともかくとして、中身はいい加減だと思っていたからだ。

「人間関係、でしたね？」

　こくり、とシオは頷く。
　彼女が人間関係を占って貰ったのは、全ての基盤な気がするからだ。
　約束されたものが無いからこそ、大切にしたいものがある、そんな気がする。

「少し凶兆が見えます。大きな諍い、突然のトラブルがあるかもしれません。突然、水をかけられたベンガルのように」
「まぁ……そうなんですね」

　そう表面上は取り繕いつつも、

（ちょっとちょっとちょっと！）

　内心は動揺していた。

「親しい人との喧嘩、付き合いのある方との離別に注意が必要かもしれません」

　それを聞いて、シオはピンと来るものがあった。

「ひょっとして塔とか悪魔とか出ちゃいました？」

　と、問いかけてみる。
　Ｎはふふと声だけで笑って、

「私の占いは正統派のタロットとは少し違うのです。でも、概ね仰りたいことは分かりますよ」

　やわらかく濁されたが、これはそうだな、とシオは直感した。

「……なんか、逆にすみません……」

　目をそらしつつ、全力で大人しくしとこうと心に決めるシオ。

「トラブルが来るとわかっていれば、心の持ちようもあるというものです。猫のようにしたたかに、ですよ」
「あはは、ありがとうございます。こういう話もしにくくてね。少し気が軽くなったみたい」

　シオはあえて笑い飛ばした。

「今回はお世話になりました。占い師さんにも良き巡り合わせがありますように」
「ありがとうございます。また運命の岐路に立ち会わせて下さい」