猫「占い」！―未来とは何か？―｜リアクション

猫「占い」！―未来とは何か？―

　旧市街にあるギャラリーでアンティーク時計の展示会があった。
　佐藤瀬莉はそれを観に行った帰り。
　すっかり満たされた思いで足取り軽やかに街中を歩いていると、猫占いの看板がかかっている店があるのを見て、「？」と首を傾げた。
　猫占い。
　なんだか面白そうなので「えいっ」とばかりに入ってみる。

「いらっしゃいませ」

　フードを被ったＮが出迎えた。

「猫占いって聞いたけど……」
「はい。あなたのお悩みを猫に例えて占わせて頂きますよ」

　猫に例えて、というのが佐藤の琴線に触れた。
　占ってもらうことに決めて、Ｎの前に腰掛ける。

「あたしの将来の夢は時計職人になること。そのためにスイスにある時計学校へ留学すると決めているんだ」

　佐藤はそのために必要なフランス語を習ったり、時計に関する知識を学んだりと、いろいろと努力しているところである。

「将来、あたしは立派な時計職人になれているかな？」

　今から20年後くらいの未来について占って貰いたい、と佐藤は言った。

「ではこの中から一枚引いて下さい」

　Ｎが差し出したカードの束から、佐藤は一枚を選んだ。

「あなたは猫で例えると、マンチカンですね」

　マンチカンは手足が短くて、犬でいえばダックスフンドのような猫種である。
　手足が短いというとマイナスイメージのように聞こえるかもしれないが、実物を見ればその愛らしさが分かるだろう。

「マンチカンタイプのあなたは、明るく活発なタイプです。じっとしていることが苦手で、いつも楽しいことを見つけては動きまわっています」

　Ｎは続ける。

「一つの事を極めるというより、広く浅く様々なことを経験したいタイプ。執着心がないため、興味の対象を次々と変えることが出来、行動範囲を広げられるのは、素晴らしい点でしょう。ただ、器用貧乏になってしまうこともあるので、ある程度これだと思えるものが見つかったら、それまで以上に深く追求していくといいでしょうね」

　占いの結果は少し芳しくないもののように佐藤は感じられた。
　もっと言えば、時計職人になるという情熱を否定されたように感じたのだ。

「…………これって、決まりきった未来じゃないよね。いいよ、あたしは何が何でもやりぬいてやるから。絶対に一人前の時計職人になってやるから」

　高らかに佐藤は宣言する。
　占いでどう出ようと関係ない。
　あたしにはこの道を行くんだ、と。

　宣言してから、佐藤ははっと我に返った。
　Ｎが気を悪くしたのではないか、と思ったのだが、佐藤の言葉にＮはにこりと微笑んだようだった。

「その意気なら大丈夫でしょう。占いは飽くまで占い。運命を切り開くのは飽くまであなた。あなたにはその覚悟がある。どうかその覚悟を持ち続けて」

　Ｎは開運グッズとして、マンチカンの日時計を紹介してきた。
　ディフォルメされたマンチカンの顔をあしらったそれはとてもかわいらしく、また時計を愛好する佐藤にとってもクリティカルヒットだったので、彼女はそれを購入することに決めた。

「ありがと。占ってもらって、気持ちが一層固まったよ」
「それは何より。またいらして下さいね」

　

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