うそつきおーかみの島｜リアクション

うそつきおーかみの島

■ヒミツの夜
　雷鳴の夜。
　恵御納夏朝は教会を訪れていた。
　こんなところに教会があったのか、と思うほど周囲に隠れた場所だ。
　手には、一枚の手紙。

　『狼子島の呪いを解く方法をみつけた』

　教会の地図と共に雑誌見出しのパッチワークで書かれたその手紙を、夏朝はポケットにしまいこむ。
　傘を畳み、教会の扉を開いた。
　閉じる扉。
　遠ざかる雨音。
　絨毯の上を歩いて行くと、誰かの後ろ姿があった。
「来たんだね」
　ゆっくりと振り返るその人影。
　雷鳴と閃光で露わになった顔は、旅鴉月詠だった。
　目をぱちくりとする夏朝。
「……なんで」
「きみに、真実を教えることにしたよ」
　ぎい、と開く教会の扉。
　背後に現われた誰かの気配に、夏朝は咄嗟に振り返る。
　再びの雷鳴と閃光に、照らされる顔。
「神野美野梨……」
「ここはね、私の島なのよ。だってほら、『うそつき王、神野島』」
　近づいてくる。
　逃げ場は、ない。
　夏朝は……いや、夏夜は血が出るほどに唇を噛んだ。
「……だましたな」
「最初に騙したのは、きみだよ」

　――夏朝はこの夜、忽然と姿を消しました。

　男は狼だと歌う月詠。
　四つの人狼の着ぐるみ。
　雷鳴は、しばらくは止まないだろう。

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