ののこがふあーっとあくびした｜リアクション

ののこがふあーっとあくびした

　中学二年生の三夜虹司は、隣町の馴染みの電気店にいました。
（あれ？　……あの人？）
　近くにいた男性客が何気なく商品を袖にいれるのを、虹司は見てしまいました。
　店主さんは気づいていないようで、そのまま男は店を出て行ってしまいます。
（万引き……？！）
　大人しい虹司は声を上げることができません。
　でも、見過ごすこともできませんでした。
　黙ってその男の後を追いました。
（もしかして、うっかりした、って戻ってくるかも……）
　一縷の期待も空しく、男はそのまま立ち去ろうとしています。
（やっぱり盗んだな）
　虹司は意を決して男の腕を掴みました。
　店を出て５０ｍ行かないところでした。
「け、け、警察いきましょう」
　勇気を出して言いましたが、男は怯む様子もなくじろりとこちらを睨みました。
「離せ」
（離せだって？　犯罪はゆるせない……いつもお世話になってる店主さんの店の物を盗むなんて！）
　しかし。よく見れば男は虹司より大きいしいかつい、ちょっとやばめの人のようです。
（なんの仕事してる人なんだろ……俺の力なんかじゃ……）
　１６６cm、スポーツをしてるわけでもなくやせている虹司です。
　ケンカになったら相手にかなうはずがありません。
　一瞬で冷や汗がだーっと出てきました。
（ああ、こわい、こわい……）
「離せよ！」
　男は虹司を振りほどこうとしました。
（そうだ、僕のろっこんで失神するまで電気ながせるんだったっけ……）
　思い出したものの、虹司のろっこんの発動条件は少々面倒でした。
（自分をダメなやつと思えば思うほど発動するんだったからきっとつかえない……でも、今は心から怒ってるんだ、離しちゃ駄目だ！）　
　次の瞬間、男の体が硬直したかと思うと、続いてがっくりとくずおれました。
（あれ？）
　手から電流が出て行ったのを、虹司は確かに感じたのでした。
「どうした？」
　周りの人が集まってきます。
「あ、あの……万引き犯を捕まえました」
　犯人の袖から転がり出た商品を拾い、虹司はしっかりとそう言ったのでした。

　

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