ののこがふあーっとあくびした｜リアクション

ののこがふあーっとあくびした

　新田亮は下校中、物思いに耽けっていました。
（俺のろっこん、いつも使うときは空気を限界まで吸ってるよな）
　亮のろっこん『鬼人の体（サード・フォース）』は、空気を限界まで吸い、脳内で「発動」と言うことで発動します。
　そう思っていたのですが。
（ただ過去を振り返ると、そこまでしなくても発動していたような気がする。俺の能力……もしかすると発動条件を勘違いしていたのかも）
　格闘技を通じて己を鍛え続けている亮ですが、小柄で筋肉量と体力は平均男性より若干低めです。
　身体能力が３倍になるろっこんは、神魂の影響で戦いに巻き込まれるようになった今、なくてはならない力でした。
　最近追加能力を得たのですが、能力発動中、頭で倍化と言えば身体能力６倍になるのです。
（倍化のときは特別に息をすったりしないもんな）
　これは確認する必要がある、と亮は思いました。

　あたりを見回すと、旧市街の漁港近くの道はいつもの通り人気がありません。
　せいぜい野良猫がうろついているくらいです。
「試してみるか」　
　軽く息を吸って、息を止めたまま亮は頭の中で言葉を発しました。
（発動！）
　力がみなぎってきた感覚を感じて、亮はジャンプしてみました。
　塀の上にいた猫が、下に見えるくらい。高い景色を目が捉えます。
　体感で３倍といったところでしょうか、いつも限界まで息を吸って発動しているときと変わらない高さです。
　着地の際、足も負担を感じることなく、いつもより大きな衝撃を受け止めました。
「ちゃんと発動してるな」
　亮は満足そうに言いました。
「これなら、今より使いやすくなるぞ」　
　笑みを浮かべて帰宅する亮。
（もっと早く気づけばよかったな）
　未だに彼は気づいていません。勘違いしていたわけではなく、神魂の発動条件が変化していた事に。

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