【ホワイトデー】煌燦-KiraKira-ホワイトアイランド｜リアクション

【ホワイトデー】煌燦-KiraKira-ホワイトアイランド

● プロローグ

　彼の背は、頭一つ分高い。
　見上げれば春めく薄花色の空に、彼の金の髪が、まるで咲きたての蒲公英みたいにキラキラと映えている。
　首元まで留めた白いシャツに、蒼のセーター。その上から白のコートを羽織った彼は、白く染まった街並みに舞い降りた天使のようだと、彼女は思う。
「なんだ？」
　彼――クルト・エールヴァールは小首を傾げ、澄んだ蒼の瞳をこちらに向ける。
　それだけで、彼女――嘉島和穂の心はハートで埋まり、天へと舞い上がりそうになる。

「あっあの、今日はありがとうございます！」
「何をそんなに動揺している？　……俺から誘うのは珍しいか？」
「えっ、そ、そうですね。意外というか、今日はホワイトデーと言うか、まさかクルトさんから誘っていただけるなんて」
　――で、デート……だと、思っていい！？　かな！？
　和穂は心の中でセリフの続きを付け加える。
「意外？　そうだろうか、そんな事はないと思ったが……」
　クルトは硬質な声で答え、金の髪をかき上げた。
　ああ。
　ドキドキする。
　和穂は思わず目を瞑る。
　ふとした瞬間の仕草が、いちいち心臓に悪い。――恰好良くて。
「今日の予定だが……」
　クルトはあれこれ説明してくれる。動物園に行ってから、夜の寝子ヶ浜海浜公園のフィナーレを見に行こう、という概要だ。論文でも読んでいるかのように淡々とした物言いで、ひとによっては冷たいとすら感じそうだが、その中身の細かさから、和穂は彼が、相当、下調べしてきたに違いないことを感じ取った。
（時々真面目が過ぎるそんなところも好き）
　突如心に浮かんだ言葉に、和穂の心はきゃあっと跳ねる。もう、この心臓、どうしてくれよう。
　そんな和穂の異変に気付いたクルトは、話すのをやめ、やや胡乱げに彼女を見た。
「……和穂ちゃん、聞いてるか？」
「ふえっ、は、はい。クルトさんと一緒ならどこでも！　行きます！」
　ドキドキしすぎて正直話はよく頭に入らなかったけど、和穂は前のめりで返事をした。
　クルトは眉を上げ、瞬き一つ。
「まぁいい、では行こうか」
「はい、今日はよろしくお願いします！」