花粉撃退大作戦｜リアクション

花粉撃退大作戦

【エピローグ】

　枝を選ぶ美咲紀に、他の者たちも地面に山になった枝を見やった。
「そういえば、ヒノキっていい香りがするし、消臭効果があると、ばあばから聞いたことがあるのだ」
　小麗が言って、枝の山に歩み寄る。
「このままにしておくのはもったいないし、椅子とか台を作ってもいいか、先生に相談してみるのだ」
「この枝、たしかにもったいないね。椅子や台を作るほかに、チップにしてみるのもいいかも！　いろいろと使えるみたいだし！」
　若菜も、うなずいて返す。
「それもいいのだ。……とにかく、使えそうな枝を持って帰るのだ」
「ええ！」
　お互いうなずき合って、小麗と若菜は持ち帰る枝を選び始めた。
「削って、バターナイフにするかな」
　修も言って、枝を選び始める。
「皮を剥いて、タンスに入れてもいいな。防虫剤だよ」
「ヒノキって、そういう使い方もできるのね」
　修の言葉に、春香が感心して言った。
「ふうん。……じゃあ、俺も少し持って帰ろうかな」
　武道も興味深げにヒノキの枝を見やった。
　そんな仲間たちの傍で、刀は大きく伸びをした。
「あー疲れた。……２９９ｃｏｆｆｅｅでコーヒー飲んでから帰るかな」
　呟いて、武道をふり返る。
「志波先輩たちも、どうです？　コーヒー」
「いいね☆　労働のあとにはやっぱ、コーヒーだよね」
　うなずいたものの、武道の手には葉と花を落としたヒノキの枝がいくつか握られている。
「……といっても、これを持ったままじゃあなあ。それに、理事長にもどうなったか報告して、枝を持って帰る許可ももらいたいし……」
　どうしようかと、手の中の枝を見下ろす彼に、小麗が言った。
「それなら、一旦学校へ行って、枝を用務員のおじちゃんにでも、預かってもらうのは、どうだ？　しゃおりーも借りた道具を返しに行くから、一緒に行けるのだ」
「お、それいいね☆　理事長も学校にいるかもだし、よし、そうしよう！」
　武道は即座に決めて、他の者たちを見回す。
「私も一緒に行くね。疲れたから、休んで帰りたいし」
　若菜の言葉に、春香もうなずいた。
「私も。……清浄な空気を吸いたいわ」
　一方、美咲紀は。
「私はこのまま、帰るのです。集めた枝を、早く挿し木に使えるよう処理したいのです」
「俺も帰るよ。美咲紀を、手伝いたいからな」
　修も言って、バターナイフにするために選んだ枝を手に、彼女と共に山を降りて行く。
「あたしも、帰るね。遅くなると、親が心配するから」
　それを見送り、瀬莉も言って踵を返した。
　たしかに、そろそろあたりは黄昏の色に染まり始めている。
　それに気づいて、他の者たちは顔を見合わせた。
「それじゃ、俺たちもそろそろ行くか」
　武道に言われて、小麗、若菜、春香、刀の四人も踵を返す。
「あのヒノキ、売ったらいい金になるんじゃないか？」
　最後に倒れたヒノキを一瞥して刀が言うのへ、武道は肩をすくめて答えた。
「かもしれないね☆　でも、あれをどうするかは、所有者の理事長が決めることだよ」
　そして、先頭に立って山を降りて行く。
　刀も、それもそうだと肩をすくめた。

　かくして、花粉撃退大作戦は、幕を閉じたのである――。

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