このしばらく、寝子高の裏手の森の様子が変だ。
生徒たちも、テニスコートや弓道場など、裏手に近い施設を使う頻度の高い者たちは、鼻をぐすぐす、目をしばしばやっている者が多い。
そのうち。
「最近、学校の裏手が妙に霞んでないか?」
「風の強い日は、あたりが黄色く染まってる気がする」
などと言う者たちも出始めた。
そんなある日のこと。
二年生の五代 春香は、落神神社から続く山道を歩いていた。
彼女も今年はひどい花粉症で、鼻水と突然あふれ出す涙とくしゃみに悩まされている。そのため、外出時はガスマスクのような顔全体をおおうマスクを装着していた。……もっとも、そんな状態でも、夕暮れ時の落神神社の寂れた様子を写真に撮るのだと、わざわざ出かけていたのだった。
と、彼女はふいに足を止めた。
どこからか、ブシュッという何かが噴き出すような音が、聞こえて来たせいだ。
彼女が眉をひそめていると、その音はまた聞こえて来た。
ややあって彼女は、音の源を求めて歩き出す。
「……嘘……! 何、これ……」
やがて彼女がたどりついた先には、巨大なヒノキが立っていた。
しかもそのヒノキからは、ブシュッという音と共に、いっせいに花粉が噴き出されている。
通常、ヒノキの花粉は風に乗ってあたりにまき散らされるものだ。
だがこの木は、まるで呼吸しているかのように、一定の間隔を置いて花粉を噴き出している。
「……今年の、一部の寝子高生の花粉症の原因って……もしかして、これ?」
春香は、呆然とその木を見上げて呟いた。
花粉を吐き出す巨大ヒノキのことは、春香の口から生徒会長の
志波 武道に知らされた。
「すごいな。こんなの初めて見た。……だが、こいつが一部の生徒を苦しめてるなら、やっぱ退治しないとな」
実際に、巨大ヒノキを目にした武道も、しばし呆然としたあと、大きくうなずいて言う。
「そうよね。これは、この巨大ヒノキをなんとかしなくちゃだわ!」
春香も叫ぶ。
「よし。みんなで巨大ヒノキを退治するための組織を作ろう。そして、花粉を撃退するんだ!」
しばし考え、武道は言って、拳を突き上げた。
「題して、『花粉撃退大作戦』だ!」
「おおーっ!」
春香も、一緒になって拳を突き上げる。
かくして、巨大ヒノキの存在と、それを退治るための作戦決行が、寝子高生をはじめとして、寝子高周辺の人々、はては寝子島chやねこったーでまで流布されたのだった。
志波 武道さま、ガイドへの登場、ありがとうございました。
こんにちわ、マスターの織人文です。
さて。春といえば花粉症というわけで、今回のシナリオでは花粉を噴き出す巨大ヒノキを退治していただきます。
もちろん、どなたでも参加していただけます。
寝子高生も、そうでない人も、学生さんも社会人も大人も子供も、歓迎です。
PCの行動について
以下の中から一つを選んで、ご参加下さい。
A、巨大ヒノキを切り倒す。
ヒノキを幹から切り倒します。
幹はかなり太いですが、何人かでやれば切り倒せるかもしれません。
B、枝を切る。
花粉を噴き出す枝を、切り落とします。
上の方の枝は、木に登らないと切れないものもあります。
C、巨大ヒノキ及び周辺を調べる。
ヒノキの弱点がないか、どうにかする方法はないかなど、ヒノキと周辺を調べます。
これらはどれも、道具を使ってもいいですし、ろっこんを使っても問題ありません。
また、花粉症の症状やなる・ならないは個人差がありますので、そこは自由に決めていただいてかまいません。
ただ、このヒノキは特別なので、花粉症ではない人も症状が出ることがあります。
一時的に、花粉症を体験してみるのも、楽しいかもしれませんね。
NPC
【五代 春香】
17歳。寝子高2年生。
猫鳴館の住人で、廃墟と星が好き。
それでは、みなさまの参加を、心よりお待ちしています。