夕方、何する？｜リアクション

夕方、何する？

　トワが目を覚ますと、トワの上で箱座りしていた猫がニャーと鳴いてから地面に降り立った。

「あ、おはようございます」

　鳴き声で背後の変化に気付いたらしいお姉さんが振り返った。
　周囲には猫がたくさんいるけど、皆二本足ではないし、喋ったりもしてない。夢だったみたい。

「ここは猫の集会場所デシタカー」
「ええ。色々な場所に集会場所を持っているみたいですよ」

　お姉さんはそう言って、猫の皆を見る。
　と、トワを呼ぶ声がして、公園の入口へ顔を向けた。

「猫のみんなも暗くならないうちに帰るのデスヨ」
「気をつけて帰ってくださいね」
「ありがとうデスヨ」

　トワはお姉さんにもお礼を言うと、お迎えに向かって走っていった。

◆◆◆◆　　　　◆◆◆◆

　起きた女の子を見送った綾花も猫メモを閉じた。
　体重の変化や毛艶の更新も終わったし、たくさん触れ合えた。
　皆同じくらい好きな彼らも元気で、至福の時間を味わえたと思う。

「そろそろ行くね」

　綾花が名残惜しそうに言うと、綾花があげた煮干を美味しそうに食べる猫が顔を上げ、またおいでとでも言うかの様に可愛らしく鳴いた。
　公園を後にした綾花はキャットロードまでの道を急ぎ、スーパーへ到着、タイムサービスの待機列へ並ぶ。

（限定数を考えたら、牛肉優先。サラダ油は重いから沢山買われない分牛肉より後でも大丈夫）

　自分なりの作戦を立てていると、店内放送が流れ、タイムサービス開始！

「……ッ」

　開始の放送と同時に後ろから強引に突き飛ばして前へ進もうとする主婦に負けまいと綾花も急ぐ。
　優しい性格もあり、強引に押し通るような主婦と同じ様にはならないけど、綾花は買い物カゴの中にお目当ての牛肉をゲットし、すぐにサラダ油のコーナーへ。

「両方無事にゲットです」

　料理をしているからこその読み勝ち。
　小さい頃からお手伝いしてて良かった。
　これで夕食はすき焼き決定。
　後は他のすき焼きの具を購入しなければ。

「シメはどうしましょうか」

　スーパーをぐるっと巡ってすき焼きの具を購入し終えた綾花は、すき焼きのシメに思いを馳せる。
　うどんにするか、雑炊にするか……最近は炒飯にしたりパスタにしたりと色々あるのは知っているけど。
　悩ましい、と考えていると、目に捨て置けない文字が飛び込んできた。

『パッケージ変更のため大安売り！　二缶で一缶の値段！！』

　パッケージ変更での大安売りなら、新パッケージまでの期間限定だろう。
　けれど、パッケージ変更しようと中身が変わってないなら、食べる猫には関係ない。

「クロワが好きなキャットフードですね」

　これは買わねば。
　綾花は猫鳴館の自室で自分の帰りを待つクロワのため、カゴの中へキャットフードを入れていく。
　自分も得をしたし、クロワも喜んでくれる……そう思うと、いい買い物だ。
　悩んだシメも買い、足取り軽く帰ると、部屋のドアを開けた。

「クロワ、ただいま」

　猫缶を見たクロワが綾花に飛びつくのは、これからほんの少しだけ後の話。

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