ホワイト・ティータイム｜リアクション

ホワイト・ティータイム

「ごめーん、少し遅くなっちゃった！」
　家庭科室のドアを開けた鴇波羽衣がきょろきょろと教室内を見渡しながら挨拶をする。わたわたとマフラーを外す羽衣を見て高梨彩葉が小麦粉を振るう手を止めた。
「まだ時間あるから大丈夫だよー。外、雪ふってきたね。寒かった？」
「ありがとう！　うん、風はないんだけど冷蔵庫の中にいるみたいだったよ！」
「そっかー。お客さんたちが到着するころには軽く積もってるかもね」
　本日は製菓部主催のアフタヌーンティーが開催される。招待客は３時に来る予定だ。
「鴇波さーん。今日の材料、お店の人が届けてくれてるよ。冷蔵庫に全部入ってる！」
　花厳望春がパンにマーガリンを塗りながら羽衣に声をかけた。望春はサンドイッチを作っているようだ。これから切る予定の洗ったきゅうりがボウルに入れてあった。
「冷蔵庫だね、了解だよー！　望春くんのサンドイッチ、色々な具があるね。色が綺麗で美味しそうだなぁ」
「よかったらひとつ味見する？」
「いいのっ？」
「うん。一口サイズで作ってるんだけど、女の子の一口ってわかんないからさ。食べて感想教えてよ」
「わーい！　もぐもぐ……」
　卵のサンドイッチを羽衣がひょいとつまむ。
「どうかな？」
「美味しい！　サイズもこのくらいが丁度いいよ」
「よかった。なら、この調子でたくさん作るよ」
　望春は安心したように微笑むとゆで卵のからを剥き始めた。
　今回はもてなしの菓子だけでなく家庭科室の飾りつけにも気を配る。
「俺が椅子とか移動させとく。力仕事あったら言ってね」
　望春が話ながらてきぱきと椅子と机を移動させた。今回は長方形の形に机を集めてゲストには決まった席に座ってもらう。気軽な席なので後半は自由に移動してもらっても構わない。
「羽衣ちゃん。お手伝いすることあるー？」
　机に向かって作業をしている羽衣の背中に彩葉が話しかける。羽衣が上半身だけ振り向いて「お願いっ」と楽しそうな笑顔を見せる。家庭科室の飾りつけは羽衣が中心になって動いていた。
「飾りを作っているの？」
「そうなの。春っぽく花飾りをメインにしようと思うんだ。あっ、今日は雪が降ったから綿を使って雪の要素も足そうかな？」
「いいね！　私も手伝うよー」
「ありがとう！」
　彩葉は羽衣の近くの席に座ると花飾りの材料に手を伸ばした。

このページにイラストを設定する