小学生の年度末｜リアクション

小学生の年度末

○……がんば、る
　
　５年生の赤銅スフィアは、星ヶ丘の親戚の家の自室で明日のテストのことを考えていた。
　ある国際機関所属の研究者である両親は仕事のためスフィアと離れて暮らしていた。
　元々人見知りが激しく内向的な上、ハーフで髪が赤く、目もウサギのように赤みがかっているスフィアは他の人との違いに気づいて以来人目を避けるようになった。
　唯一の友達はウサギのぬいぐるみ、ヘイヤだ。
　学校には持っていけないけれど、家ではいつも一緒だ。
　スフィアはヘイヤに話しかける。
「テスト、はパパとママの仕事先で『もぎてすと』を受けたことがあるから緊張したりしない、よ」
　几帳面なスフィアは、テスト自体は苦にならない。
「だけどまだスフィア、漢字が苦手。国語の問題もそうだけど、ほかの教科の問題文にふりがながふってなかったらどうしよう……」
　薄茶色のヘイヤをじっと見つめ、スフィアは考える。
「じゃあやることは一つ、漢字の勉強だ」
　漢字が書いてあるものと言えば……
　スフィアは思いたち、おじさんとおばさんのところに向かった。
「……新聞を、貸してください。朝刊と夕刊……」
「ああ、いいよ」
　頭を下げて、渡された新聞を受け取り、一人じゃ心細いからヘイヤと一緒に広げ読んでみる。
「うーん……やっぱり難しいかも」
　ふりがながふってあるのはマンガのセリフくらいで、記事に出てくる漢字は見たこともない難しいものばかりだ。
　ヘイヤも「むずかしいよ」と言ってるみたいな気がする。
「国語の教科書を音読する練習に切り替えたほうがいいかな？」
　教科書を開き、小さな声で読み始める。
「出てくる難しい漢字をノートに書いて予習をしてみよう！」
　スフィアはノートとウサギの筆箱を取り出し、漢字を書き始めた。
「よし、頑張る」
　果たして、スフィアの頑張りは実を結ぶのだろうか？

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