俺達がネコモンだ！　ver.紅｜リアクション

俺達がネコモンだ！　ver.紅

【青いつばさのミッチャマン】

　八神修は常日頃から紳士であることを心掛けている。
　そして、それは世界が切り分けられた後であっても、ねこモン――『にゃがみん』になってしまった後でも変わらない。

「……半人型のねこモンに変身できたことは不幸中の幸いだったな」

　修は、ネコミミを帽子で隠し、尻尾はズボンの中に押し込んで、あくまで人の姿を演じることで無用な争いをさけようとした。
（元の世界に戻る方法は何となくわかった。バトルをせず、コミュニケーションで穏便に済ませられるなら俺はそうしたい）
　半人型である利点を最大限に活用し、運良くにゃがみん状態でも手許にあったスマホで必要な情報を収集していく。

「動物園のゴミ捨て場を巣にしているペンギンねこモン……？」
　速読気味に高速スクロールで流し見していた情報の一つに、修は目を止めた。
「巣がゴミ捨て場、か……。本人にとっては不本意だろうが、思い当たる人物がいるな……」
　おそらく久保田美和がねこモンになった姿なのだろう。
　なんてわかりやすいんだ、と修は思わず微笑んでしまう。
　早速、修は動物園に向かうことにした。
　道中、困っているねこモンやねこモントレーナーがいれば積極的に助けた。
　特にツインテールっぽいデザインのねこモンには完全無欠の紳士的な行為を心掛けた。
　何故なら、修は紳士だからである。他意はない。他意なんてあるはずがない。
　そして、
「うわあ……」
　動物園の一角にあるそのゴミ溜め――もといミッチャマの巣に修は思わず遠い目をした。
「……あら？　そこにいるのは誰かしら？」
　と、そこでミッチャマが修の目の前に姿を現した。
　ミッチャマは青いつばさが印象的な可愛らしい容姿をしたねこモンだった。
「俺はにゃがみん。今日は君と話をしに来たんだ」
　早速、修はミッチャマとのコミュニケーションを開始する。
「え……？」
　特に口説いたつもりはなかったが、修はミッチャマが少しドキっとした表情をしたことに気づいた。
　同時に、双方にＥＸＰが溜まっていくのを感じる。
「君は何か探しものをしているのかい？」
「……え、ええ。運命の恋人を探しているの」
　ここで！？
　と突っ込みたい気持ちを修はグッと我慢する。
　なお、今、さりげなくミッチャマはスマイルキャッチという魅了技を使ったのだが、耐性のある修には『こうかはなかった』ようだ。残念！
「恋人を探しているなら、もっと人の多いところに行ってみる？　君は可愛いから、綺麗にしていた方が素敵だよ」
「！？！？！？」
　そして、修はトントン拍子に口説きを進めていった。ミッチャマは大変チョロかった。有り体にいえば『こうかはばつぐんだ！』である。
（……あと、一押しか。あとは一緒に巣の片づけでもすれば――）
　と、修が思ったまさにそのとき、どこからともなく一体のニャフレシアがやってきた。
「うわあ……凄い巣だね。ねぇ、良かったらボクが掃除を手伝おうか？」
　それは、知人の音海なぎさがねこモン化した姿だったが、そのときの修はそのことなど知る由もない。
「ああ、助かるよ。じゃあミッチャマ。出かける前に、まず要るものと要らないものを整理して――」
「え？　特にいるものはないけど？」
　だったら、どうして捨てないのか。
　修となぎさは突っ込みたい気持ちを全力で抑えて、互いに頷き合う。
　かくして、最後のＥＸＰ獲得のための三匹による大掃除が始まる。

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