俺達がネコモンだ！　ver.紅｜リアクション

俺達がネコモンだ！　ver.紅

【ファイアーバード】

　以前から、佐藤瀬莉は思っていた。

（ファイニャーって、ぶっちゃけただの焼き鳥じゃない？）

　ファイニャーというのは、初代ねこモンの頃から存在する伝説の鳥ねこモンのうちの一体である。
　つまりレジェンドな感じのねこモンだ。
　が、なにぶん初代であるがゆえに、まだ小５である現代っ子の瀬莉にはそのレジェンド感が今一つ伝わってこないのである。
　ともかく、そんな瀬莉だったから、いきなりねこモンだらけの世界に飛ばされて、挙句、自分のパートナーねこモンが、一見するとそのファイニャーの劣化コピーみたいなファイニャローというねこモンだったときは思わずガックリときた。
「……ああもう！　なんでもっとカッコいいのがこないかなー。能力値も大したことないし。ん？　でも、この特性は……？」
　そこで、瀬莉はそのファイニャローの『しっぷうのつばさ』という特性に気づいた。
　それは、ひこう属性の技なら、通常の技よりも先手を打って発動できるという特性だった。
「これ、使えるかも……」
　ファイニャローは鳥ねこモンであるから、ひこう属性の技には事欠かない。
　ひこう属性が極めて有効であるむしタイプがたくさんいそうな九夜山もちょうど目の前にあった。
　これはもう行くしかない。
　瀬莉は早速ファイニャローを連れて、九夜山の中に飛び込んでいた。
「あ、ニャタピーだ。いけ、ファイニャロー。『つばさでぶちころがす』！」
　瀬莉は、相性のいいむしねこモンを見つけるたびに、そのちょっと物騒な響きのひこう技で文字通りねこモンたちをぶち転がしていった。合言葉は『ガンガンいこうぜ！』である。
　そうしているうちに、瀬莉はすっかりファイニャローを気に入ってしまっていた。使ってみると、なかなか可愛い相棒なのである。
　と、そのとき、瀬莉は戦う前から死にそうな落ち武者――もといふなむしゃーを発見した。
「……あの、だいじょうぶ？」
　思わず瀬莉は声をかけていた。
「……大丈夫だ。それより早くこの山を出た方がいい。この山には……出る」
　ふなむしゃーはそう言うと、ふらふらとまた麓の方へ歩き始めた。
　何が出る、とは言わなかったが、そのふなむしゃーの表情を見ただけで、それが恐ろしいものであることはわかった。
「……ば、場所を変えようかな。べ、べつに怖いわけじゃないけどっ！」
　誰にでもなくそう言い訳して、瀬莉は九夜山を下りて、また別の場所を探すことにした。
　ＥＸＰが元の世界に戻れるほどに溜まるまで、あともう少し――。

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