俺達がネコモンだ！　ver.紅｜リアクション

俺達がネコモンだ！　ver.紅

【ありのまま今起こったことを話そう】

　水守流は、気がつくとフナムシ――もとい、むしゃねこモン『ふなむしゃー』になっていた。

「……どうして……こうなった……」

　流は膝をついて、溢れる涙を拭った。
　よりにもよって、なんでフナムシ――もとい『ふなむしゃー』なのか。いや、好きだけど。原作ゲームで随分と苦戦させられた印象深い相手ではあるのだけど。
「落ち着け、俺。こういうときは素数を数えるんだ。……２、３、５、７、１１、１３……」
　一心不乱に素数を数えていると、少し心が落ち着いてきた。
「まあ、なってしまったもんは仕方ねぇか。こうなりゃ、さっさとＥＸＰを稼いで元の世界に戻るぜ」
　幸い、流はゲーマーであり、ねこモンもそれなりにやり込んでいたので、ふなむしゃーの得意とする戦い方はよく心得ていた。
（ふなむしゃーがもっともとくいとする技は――「であいがしら」。登場したターンに限り、優先的に先制攻撃でき、かつ威力も高い強力な「むし」属性の技だ！）
　流は、属性の相性等も考慮に入れ、『むし』タイプが得意とする『くさ』が多く生息しそうな九夜山へ向かう。
「ふははっ！　思った通りだ！　強い、強いぞ、ふなむしゃー！」
　ねこモンと遭遇するたびに、流は「であいがしら」を発動し、一撃離脱の辻斬り戦法で効率よくＥＸＰを稼いでいく。
「へへっ。これじゃあちょっともの足りないな……」
　流が少し退屈そうに言ったそのときのことだった。

「……あら、それじゃあアタシが相手をしてあげましょうか？」

「……なん……だと……」
　現れたのは、どう考えてもフジコ先生が入っている感じの、りきしねこモン『フジコヤマ』だった。
（く……。ねこモンになっても、存在感ぱねぇ……。だが――今の俺には「であいがしら」がある！）
　流は、脇目も振らず距離を詰めて、「であいがしら」にフジコヤマをきりつけた。
　フジコヤマはこう見えて、エスパータイプ。こうかはばつぐんだ！
　だが、しかし、
「……ふふ。やるわね。でも、その程度じゃアタシは倒せない」
「……！？」
　次の瞬間、フジコヤマの『ひっさつはりて』が逆に流を襲った。
「ぐああああっ……」
　筋骨隆々の腕から繰り出されるはりてはまさに必殺の威力で流のＨＰを半分以下に削り取る。エスパータイプなのに！
　しかし、幸か不幸か、それが『ふなむしゃー』の特性である「せんりゃくてきてったい」を発動させた。
　ほとんど自動的に、流の身体は九夜山の麓に向かって走り出す！
　だが、しかし。

「に・が・さ・な・い・わ・よ・ぉ・ー・ー・ー・ー・ー！」

「うわあああああああああああああっ！」

　それからもしばらくの間、流とフジコヤマの命懸けのおにごっこは終わることなく続く羽目になったのであった。

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