＜月華＞銀雷の夜　――嵐の国奪還戦――｜リアクション

＜月華＞銀雷の夜　――嵐の国奪還戦――

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　『嵐の国』の封印が解け、一同は祠へと集合した。
「皆、本当にありがとう。これで、『嵐の国』はここに戻り、月長石の生産や浄化の力の底上げなどができるようになった。なにより、我々天狼族の故郷が戻ったことを、心より感謝するよ」
　ライメイの言葉に労をねぎらわれ、伝令によって戻ってきた天狼族たちもまた、作戦の参加者達に感謝の意を表した。

「ありがとうございます、清一郎様！」
「ん？　あぁ、アオハちゃんやん！」
　須藤清一郎の元にやってきたのは、予知能力を持つ巫女の天狼族、アオハだった。彼女はこれで祖父母を弔える、と清一郎に心から礼を述べ、彼は顔をほんのりと赤くする。その様子に八神修と美咲紀は苦笑しつつも顔を見合わせた。美咲紀は修が傷だらけな上顔色が悪い事に気づき、花を手にする。
　美咲紀が花を手に舞うと、傷を癒していく。修だけではなく、その場にいた怪我人たちは治癒を施され、安堵の息をつく。
　その舞う横顔が大人びたように見え、修は美咲紀の微笑みに静かに頷いて礼を述べた。そして、美咲紀に手を引かれ、救護用の天幕へと向かっていった。

　刹弦は影の貴人とも普通の住人とも言えない状態になっている、とライメイは直感で判断。しばらくの間『嵐の国』で預かることになった。
　また、恵御納夏朝（の交換人格、夏夜）が刹弦から聞いた情報は各地に伝えられ、対策が練られる事になった。
　疲れ果てていた彼女は、思わずうとうとしてしまう。その姿に苦笑しながらも久隆は自然と頭を撫でていた。
「がんばって、いたんだな……」
　なぜか「夏朝」と呼びかけることが出来なかった。父親の直感なのか、夏朝ではないが、かけがえの無い存在ではないか、と思えてならない。
「お疲れ様」
　優しく頭を撫でられ、夏夜は胸が暖かい気持ちで満たされる。久隆はそっと夏夜を抱え上げると救護用の天幕へと運ぶのだった。

　天幕ではサキリ・デイジーカッターや、修、ねむるなど先ほどの作戦でろっこんや種族の力を多用した者たちが眠っていた。紫や美咲紀、幽は巫女達を手伝っている。久隆に気づいた紫は事情を聞き、彼と共にゆっくりと夏夜を布団に寝かせた。
　その番でもするかのように、御剣刀が獲物を抱えるようにして天幕の入り口付近に座り込む。その姿に呉井陽太は苦笑し、軽く刀の頭を撫でた。
「な、何を」
「刀くんも疲れているんじゃないかな？　ほら、結構『加速』してたでしょ？」
　陽太は魔物を相手にしている刀がろっこんを使っていたのを覚えていた。刀は疲労していたが、それを隠していたのだ。
「ちゃんと休んでおきなよぉ？　でないと後から辛いから。ね？」
「あぁ……」
　陽太の曇った顔に、刀は申し訳なさそうに頷き、彼の手を借りて立ち上がる。陽太は「もう１人追加ね？」と中にいる紫たちに言うのであった。
　極度に疲労したサキリとねむるは、布団の中でしばらく眠っていた。その横顔に、紫が僅かに微笑を浮かべる。
「本当にお疲れ様。二人とも、誇らしいわ」
　魔物を率先して倒し、水晶の柱に閉じ込められた刹弦を救うべく２人は己の力を極限まで使っていたように紫には思えた。顔の汚れを濡れたおしぼりで拭い、髪をそっと撫でる。だが、彼女には２人がその魂までも誰かの為に燃やし尽くさないか、ふと、不安になってしまった。
　それが伝わったのだろうか。ややあってサキリもねむるも目を覚ます。
「だいじょーぶだよ、無茶しないから」
「仙藤さんも、心配してくれてありがとう」
　２人の言葉に、紫は僅かに瞳を細め頷いた。そして、サキリとねむるはゆっくりと身を起こし……、
「先輩には色々助けられちゃったね」
「僕達は、先輩のお陰で全力を生かせたと思っているよ」
　と、礼を述べるのだった。

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