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【期末テスト】赤点？満点？？春風、四日間の死線＜物語編＞
●返却直後：野々 ののこさんの結果
今回ののこが誰かれ構わず勉強を聞いていたこともあって、彼女がいったいどんな結果だったのかは学内でも興味の的となっていた。
ののこと同じ１年５組のクラスメイトたちは猶更である。
ホームルームが終わるや、ののこの周りには人だかりができる。
「野々さん、テスト結果どうだった？」
みんなを代表して尋ねたのは、佐藤 英二である。ののこが進級できるよう何度も勉強に付き合って期末試験対策で気を揉んできた経緯もあり、自分の成績を受け取るときより真剣で緊張の面持ちである。
聞かれてののこは英二の顔を見、それからクラスメイト達の顔を見た。
「みんなのお陰で、ほとんど赤点じゃなかったよ」
ほとんど赤点になりそうだった１週間前から比べると、大きな結果を残したと言えるだろう。
ののこは試験結果の用紙を皆に見せた。
「国語４０点、数学４７点、英語３３点、理科３７点、社会４４点……すごい。頑張った成果が出てる」
音楽３５点、美術３９点、体育４４点で、副教科もギリギリながら赤点じゃない。
英二は晴れやかな顔でののこを見る。
ところが、ののこの元気はイマイチだ。しかも、家庭科のところだけさりげなく親指で隠している。
「家庭科は？」
「え、んー。ふんふふ～～ん……♪」
そっぽを向いてわざとらしく鼻歌を歌うののこ。
これ、子どもが悪いなって思ってるときにやるやつだ。
なんとなく答えは予期しつつも、英二はおそるおそる尋ねてみる。
「もしかして、……家庭科だけ赤点？」
ののこは英二をじっと見つめた。太めの眉がハの字にさがり、大きな瞳をぱちぱち瞬かせたかと思うと、涙がどーっと滝のように流れ落ちた。
「うわ～ん、みんなごめん！ せっかく教えてもらったのに、赤点取っちゃったよう～～～！！」
えーん、えーんと天に向かって涙を噴き上げるくらいの勢いで泣くののこ。
クラスメイト達が代わる代わる声を掛け、大丈夫だと慰める。
英二もまた、ののこの背中を撫でるようにして、慰めの声をかけた。
「ドンマイだよ。追試や補習受ければなんとかなるかもしれないし」
「わ～ん、いっぱい勉強付き合ってくれたのにごめんね。追試とか補習とかで何とかなってほしい！」
「……もしものときは僕も一緒に先生に嘆願に行くよ。だって野々さんと一緒に進級したいもの」
「うんっ。英二君やさしいね。ありがとねっ」
◇
ののこが家庭科だけ赤点を取ったというニュースは、速やかに学内中に知れ渡った。
「あら」
３年生の仙藤 紫はこのニュースにわずかに目を瞠る。受験や就職を前にして３年生は自由登校になっている時期であるが、ののこの進級が気になり、顔を見に登校してみたらこの報せである。頑張っていたのを知っていた紫は、ののこがこの試練を際どくもクリアするかと思っていたので面食らった。
それなら盛大に泣いているかもしれないわね、と思い、１年５組を訪れてみると、案の定、ののこはクラスメイトに囲まれて、うわーんうわーんと泣いていた。
紫は開きっ放しの教室のドアを、さりげなくトントンとノックする。
「みんな試験お疲れさま」
麗しい先輩の登場に、１年生たちははっとした。
ののこに用があると知ると、礼儀正しく脇へ寄って、ののこへの道を開ける。
紫はまっすぐ歩み寄ると、膝を折って泣き腫らした目と視線を合わせた。
「野々さん、話は聞いたわよ」
紫の、深みのある優しい声に、ののこの涙腺はまた崩壊する。
「うわ～ん、先輩ー！」
ののこはぐしゃぐしゃの顔で紫の胸に頭をうずめた。
紫はそんなののこの髪をよしよしと撫で、落ち着くように言って聞かせる。
「赤点だったのは家庭科だけなんでしょう？ 頑張ったじゃない。１教科だけなら、追試や補習を受ければきっと進級できるわよ」
「そうかな？ なんとかなる？」
「ええ、もちろんよ。まずは鼻をかんで。それから深呼吸。今までのことは今までのこととして、気持ちを切り替えていきましょう？ ……そうだ、はい、これ」
紫は親猫と子猫を模った猫サブレをののこに渡した。
「ここまで頑張ったわね、と、もうひと頑張りね、のプレゼントよ」
「先輩ーありがとうー！」
受け取るやいなや、包みを破って、もぎゅもぎゅサブレを頬張るののこ。
「ひとりで食べないの。数はあるからみんなで食べてね」
ののこはこくこく頷き、そばにいた英二たちともサブレを分け合って食べる。
（もし進級が決まっていたら、『野々さんもこれで先輩って呼ばれるようになるから、そろそろ自覚しなきゃね』とか『これからはちょっとずつでもいいから勉強する習慣をつけたほうがいいわよ』とか励まそうと思っていたけれど……どうやら、野々さんが先輩と呼ばれるまでには、もうひと山ありそうね）
紫はそう思って苦笑した。
今回ののこが誰かれ構わず勉強を聞いていたこともあって、彼女がいったいどんな結果だったのかは学内でも興味の的となっていた。
ののこと同じ１年５組のクラスメイトたちは猶更である。
ホームルームが終わるや、ののこの周りには人だかりができる。
「野々さん、テスト結果どうだった？」
みんなを代表して尋ねたのは、佐藤 英二である。ののこが進級できるよう何度も勉強に付き合って期末試験対策で気を揉んできた経緯もあり、自分の成績を受け取るときより真剣で緊張の面持ちである。
聞かれてののこは英二の顔を見、それからクラスメイト達の顔を見た。
「みんなのお陰で、ほとんど赤点じゃなかったよ」
ほとんど赤点になりそうだった１週間前から比べると、大きな結果を残したと言えるだろう。
ののこは試験結果の用紙を皆に見せた。
「国語４０点、数学４７点、英語３３点、理科３７点、社会４４点……すごい。頑張った成果が出てる」
音楽３５点、美術３９点、体育４４点で、副教科もギリギリながら赤点じゃない。
英二は晴れやかな顔でののこを見る。
ところが、ののこの元気はイマイチだ。しかも、家庭科のところだけさりげなく親指で隠している。
「家庭科は？」
「え、んー。ふんふふ～～ん……♪」
そっぽを向いてわざとらしく鼻歌を歌うののこ。
これ、子どもが悪いなって思ってるときにやるやつだ。
なんとなく答えは予期しつつも、英二はおそるおそる尋ねてみる。
「もしかして、……家庭科だけ赤点？」
ののこは英二をじっと見つめた。太めの眉がハの字にさがり、大きな瞳をぱちぱち瞬かせたかと思うと、涙がどーっと滝のように流れ落ちた。
「うわ～ん、みんなごめん！ せっかく教えてもらったのに、赤点取っちゃったよう～～～！！」
えーん、えーんと天に向かって涙を噴き上げるくらいの勢いで泣くののこ。
クラスメイト達が代わる代わる声を掛け、大丈夫だと慰める。
英二もまた、ののこの背中を撫でるようにして、慰めの声をかけた。
「ドンマイだよ。追試や補習受ければなんとかなるかもしれないし」
「わ～ん、いっぱい勉強付き合ってくれたのにごめんね。追試とか補習とかで何とかなってほしい！」
「……もしものときは僕も一緒に先生に嘆願に行くよ。だって野々さんと一緒に進級したいもの」
「うんっ。英二君やさしいね。ありがとねっ」
◇
ののこが家庭科だけ赤点を取ったというニュースは、速やかに学内中に知れ渡った。
「あら」
３年生の仙藤 紫はこのニュースにわずかに目を瞠る。受験や就職を前にして３年生は自由登校になっている時期であるが、ののこの進級が気になり、顔を見に登校してみたらこの報せである。頑張っていたのを知っていた紫は、ののこがこの試練を際どくもクリアするかと思っていたので面食らった。
それなら盛大に泣いているかもしれないわね、と思い、１年５組を訪れてみると、案の定、ののこはクラスメイトに囲まれて、うわーんうわーんと泣いていた。
紫は開きっ放しの教室のドアを、さりげなくトントンとノックする。
「みんな試験お疲れさま」
麗しい先輩の登場に、１年生たちははっとした。
ののこに用があると知ると、礼儀正しく脇へ寄って、ののこへの道を開ける。
紫はまっすぐ歩み寄ると、膝を折って泣き腫らした目と視線を合わせた。
「野々さん、話は聞いたわよ」
紫の、深みのある優しい声に、ののこの涙腺はまた崩壊する。
「うわ～ん、先輩ー！」
ののこはぐしゃぐしゃの顔で紫の胸に頭をうずめた。
紫はそんなののこの髪をよしよしと撫で、落ち着くように言って聞かせる。
「赤点だったのは家庭科だけなんでしょう？ 頑張ったじゃない。１教科だけなら、追試や補習を受ければきっと進級できるわよ」
「そうかな？ なんとかなる？」
「ええ、もちろんよ。まずは鼻をかんで。それから深呼吸。今までのことは今までのこととして、気持ちを切り替えていきましょう？ ……そうだ、はい、これ」
紫は親猫と子猫を模った猫サブレをののこに渡した。
「ここまで頑張ったわね、と、もうひと頑張りね、のプレゼントよ」
「先輩ーありがとうー！」
受け取るやいなや、包みを破って、もぎゅもぎゅサブレを頬張るののこ。
「ひとりで食べないの。数はあるからみんなで食べてね」
ののこはこくこく頷き、そばにいた英二たちともサブレを分け合って食べる。
（もし進級が決まっていたら、『野々さんもこれで先輩って呼ばれるようになるから、そろそろ自覚しなきゃね』とか『これからはちょっとずつでもいいから勉強する習慣をつけたほうがいいわよ』とか励まそうと思っていたけれど……どうやら、野々さんが先輩と呼ばれるまでには、もうひと山ありそうね）
紫はそう思って苦笑した。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2017年01月01日
- 参加申し込みの期限
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- 2017年01月08日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年01月08日 11時00分
