スターエアーバトルロワイヤル｜リアクション

スターエアーバトルロワイヤル

【Round.2】

　渥美ニナは、風に呼ばれて、その岬にやってきていた。

「……まったくわけがわかりませんね」
　岬に吹き荒れる嵐と、そこから逃れるように走り去る少女の背中に目をやりながら呆れるように呟いた。
　本当にまったくわけがわからない。
　気がつけば、何かに導かれるように岬に立っていて、気がつけばすぐ後ろに謎の存在――ロッコンが浮かんでいた。
　イクリプス・チェインズ。その存在は自身のことをそう名乗った。
　ごつごつとした筋肉質の肉体を思わせる体にボロ布をまとい、その布に無数の鎖でまとわりつかせた亡霊然としたロッコン。
「……本当にわけがわかりませんが、とりあえず戦う意思がない者を一方的に襲う行為は感心しませんね」
　わけがわからないなりに、ニナは、やるべきことをやることにした。
　自身のロッコン――イクリプス・チェインズを骨削瓢の前に立ちはだからせつつ、不敵な笑みを浮かべてそう挑発する。
「おやぁ？　おたくは前回はいなかった人だねぃ。別にいいよぃ。あっしは誰が相手でも」
　瓢もまた、そんなニナに対し、彼女以上に不敵な笑みを返してニヤニヤとした顔で言った。この表情、完全に悪役である。
「……いいでしょう。私も何故だか身体がウズウズとしていたところです。お相手をさせていただきます！」
　言うが早いか、ニナの言葉に応じて、イクリプス・チェインズは動いている。
　筋肉質のボディをまとうアクセサリー――と見せかけた、その実、ロッコンの本体である鎖を周辺の岩に絡み付かせ、瓢に向かって投げつける。
「……おおっとぉ！？」
　いきなりのもれいびへの直接攻撃に、瓢はちょっと驚きつつ、しかし自慢の身軽さで華麗に避ける。
「どうやらおたくのロッコンとあっしは相性が悪いようだぁ。こういうときは……逃げるが勝ちさぁ！」
「あ……」
　言ったそばから、瓢は、ひゅるんとロッコンの姿を風に隠し、自身も脱兎のごとく退散していた。
　しかし、ただ逃げたのではない。もっと楽しい遊び相手を探しに行ったのだ。
　ニナはそう直感する。
「……追うのは難しそうですね。なら、私は戦う意思のない人々を守るために動きましょう」
　自身の言葉に一つ頷き、ニナは岬の地を蹴ってその場から駆け出した。

　　　　＊　＊　＊

　その頃、同じエノコロ岬の少し離れた場所で。
「……やあ、また会えましたね、ユイさん」
　雨崎時雨は、いつぞや出会った、もう一人の自分（？）と再会していた。
『おいおい。さんづけはよしてくれ。俺はお前、お前は俺、だろ？』
　時雨と瓜二つの顔で、ユイ・ラアドことリバース・マンは上下逆さに浮かんだ姿のまま口の端を曲げる。
『それにしても、思ったより早い再会だったな。……つか、ぶっちゃけ早過ぎね？』
　リバース・マンは、ぽつりと心情をぶっちゃけた。
　しかし、そこにはやむにやまれぬ大人の事情があるのかもしれないし、ないのかもしれない。
「……ところで、貴方が現れたということはやはり――」
　時雨がリーバス・マンに問いかけようとしたそのとき、彼の視界の端にまた別のロッコンとその持ち主の姿が映る。
「あれぇ～。あ、きみも、このまえロッコンを連れてたよねぇ？」
　スクラップ・ヴェインとその持ち主である壬生由貴奈の問いに、時雨が口の端をにたっと曲げる。
「……ええ、そうでしたね。そして、同じロッコン使いとして、こうして再会できた以上、やることは一つですよね」
「え……？」
　由貴奈が眠たげな目を驚きに見開いたときには、すでに時雨は攻撃態勢に入っている。
　ロッコンの能力で、近場に不法投棄されていた鉄塊を重力操作――由貴奈にぶつけようとする。
「……っ」
　由貴奈はスクラップ・ヴェインの能力で鉄屑を操作して、その軌道を自身からそらして回避した。
「ちょっとぉ～。うちはまだ何もしてないのに、それはないんじゃない～？」
　抗議の眼差しを向ける由貴奈に対し、それを見つめ返す時雨の瞳は冷たい。
「……だって、戦わなくちゃでしょ？」

『……おいおい。どうやら相棒も戦いに心を囚われちまったまったみたいだな。まあ、こうなったらやるしないか……』

　リバース・マンは両手をやれやれと持ち上げると、その能力を目の前の敵に向かって発動させた。

このページにイラストを設定する