たのしい世界征服｜リアクション

たのしい世界征服

■イタズラ５：エブリデイクリスマス
　町ははなやぐクリスマスカラー。
　鈴の音とイルミネーション装飾された街路樹が、ホットなカップルを更にホットに変えていく。
　けど今は３月。１２月には軽く三シーズンは早い時期だ。
　なぜこんなことになっているかは、今まさに電飾をくっつけている全身タイツさんたちが物語っていた。
　彼らの背中には『悪の組織・聖夜の宴』と書かれている。ここまで堂々とした悪の組織もめずらしーもんだ。
　だが彼らの堂々としたモーションは電飾だけに留まらない。
　ご家庭にはパーティー料理を送りつけ。
　カレンダーは毎月１２月にすり替え。
　町にはよく１２月のスーパーで流れるような音楽を流し続け。
　人前に出るスタッフはみな天使モチーフの衣装を着たイケメンだらけ。
　もはや毎日がクリスマスである。
　にゃんこの首輪を買いに町を歩いていた山田山雄（最近オシャレに気を遣う）も、なんだかホカホカした気分だ。
　町の人々もなんだかウキウキしている。
　とはいえ自宅にはにゃんこの待つ身。首輪をおやつを買って帰ろうとお店の棚に手を伸ばしたその時、女性の手とふれあった。
　はたと見れば、同年代の女性である。
　互いの目に映る自分たちに、どこか運命的なものすら感じていた。
　クリスマスのベルミュージックが心を弾ませ賛美歌を歌うイケメンたちと飾られた町が、二人の世界をきらびやかに彩っていく。
　天使コスチュームのスタッフが、クリスマスディナーのチケットを笑顔で手渡してくる。一緒に食べろよのジェスチャーつきである。
「メリークリスマス」
　３月だというのに、不思議と口を突いて出た。

　手を繋いで町を歩く山田さんを見送って、椿美咲紀はサンタクロース的なそりに腰掛けていた。
　後ろではバンドがクリスマスミュージックを奏で、袋からプレゼントを撒いている。
「世界はもう、マジメに苦しんだりなんかしてません」
　人々は毎夜ぐっすり眠り、ネコと戯れ、エロスにドキドキし、スターに喜び、毎日を平和に楽しく暮らしている。
　ならばやることは一つ。
「さあ、クリスマスパーティーの始まりなのです！」

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