たのしい世界征服｜リアクション

たのしい世界征服

■イタズラ４：エロスなき世界はカオスだ
　自宅ににゃんこが待つ山田山雄（結婚には絶望的）は残業を迫る上司の圧力をダブルラリアットではねのけると、倍速スキップで帰路についた。
　いつものように改札を潜りいつものようにホームでソシャゲ課金をかましいつものように電車に乗る。
　定時退社だというのにまさかの満員。皆家にネコでも待っているんだろうか。
　と思いつつ電車に乗り込むと、目の前には巨乳の美女がいた。
　美女っていうか羽入癒雨がいた。
　どのくらいの美女か事細かに説明してもいいけど多分違う話になっちゃうので、別の機会にとっておくことにしよう。
　話を戻すと、その美女が満員電車だからってこう、なんていうの、胸？　そう、胸。すごくこう、あれだよ、おしつける、っていう？　ああちがうちがう、自分から押しつけてるんじゃあないんだよ。不可抗力っていうじゃないかほらそういう、ね。
　とにかく、電車が揺れに揺れるたび美女の胸が押しつけられーのつぶれーのである。
　今日はいいことあったなあと電車を降りる山田さん。
　そして突然吹く突風。
　そして当然のごとくめくれるスカート。
　そして当たり前のように揺れる胸。
　乳と尻を同時に見せる訓練でも受けてるのかってくらい絶妙のカットで色々見えてしまった山田さんは顔を覆ってうひゃーと鳴いた。
　その後、月曜日の出社時には必ずその美女と出会いなにかっつーと胸の谷間を強調しながら話しかけてくるという事態に見舞われた。これが世に言う月曜日のたわ――あっこれ出したらだめな名前だ。
　そんなロマンスが偶然におこるものだろうか。
　いや、ない！
　なんでかっつーと、駅を出た美女は一瞬でメイド服に着替えると、周囲を行き交う無数の美女たちと合図を送りあったのだ。
　彼女はコードネーム・ハイユ。
　『エロスでみんなでフマジメになって、ネオニッポンをセクシー天国にしちゃおう！』計画を遂行するエージェントにして、組織の隠れボスなのだ。
「フロイトが提唱したように、エロスは人間の生きる原動力なんよ。エロスをこの世界に取り戻すんよ――第一エロスがなかったら人間が繁殖できないでしょ！」
　彼女は山田さんのみならず全国の男たちにエロスを日常的に供給し続けた。
　思春期男子には週一で胸ボタンがはじけ飛ぶ女教師を。
　病院にはスカートの丈がどうかしちゃってるナース（あえてこう表記しております）を。
　飛行機に乗れば密着度のおかしいスッチー（あえてこう表記しておりますってば）を配備した。
「あのー、ボス。男性はいいんですけど、女性はどうしましょう」
「百合に目覚めさせるんよ」
「えっでもさっき繁殖って」
「百合に目覚めさせるんよ！」
　こういうときは圧のすごい羽入癒雨であった。
　かくしてリアルエロスに満ちあふれた社会で、人々は日夜ムラムラし続け、モテる努力を重ねに重ね、経済をグルッグル回していったのだった。

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