たのしい世界征服｜リアクション

たのしい世界征服

■イタズラ３：にゃおん党に清き一票を
　最近仕事の調子がいい山田山雄（４８歳お見合い失敗続き）はスキップしながらお家へ帰る途中だった。
　と、そこへ。
「にゃおーん」
　道ばたでネコの鳴き声がするではないか。
　世の中マジメさんばかりで野良猫の生きづらい世の中になっているのに珍しいなあと思った矢先、なんと段ボールに入った子猫ちゃんがいるではないか。
　捨て猫である。このご時世に珍しい、なんて言ってる場合ではないぞ。このままでは子猫ちゃんが飢え死にしてしまう。
　山田さんは慌てて箱ごと抱え上げると、お家にダッシュしたのだった。
　さあ皆さん恒例の巻き戻しタイムですよ。
　山田さんが通るであろうこの道に、全身黒タイツの何者かが箱を持って抜き足差し足。子猫ちゃんの入った箱を見えるように開いておくと、そのまま茂みに隠れたではありませんか。
　タイツさんの背中にはＣＣＣ。小さくふりがなで『キャットキャットコミュニケーション』と書いてある親切なデザインだ。
　そう、子猫ちゃんはこの組織によって巡り会わされたのだ。

　にゃんこに囲まれてソファに座る八神修。
「猫に癒されろ！　そして猫を愛するべし！」
　背後の掛け軸には『にくきゅう』と描かれている。
　立ち上がった修はゆっくりと歩きながら説明口調で喋り始めた。
「俺は全国でネコと人をマッチングしている。偶然を装って巡り合わせることで人々の生活にネコを浸透させるんだ。町にはネコだまり。公園裏には集会場。家にはキャットタワーができあがりみなこぞってカリカリを買うだろう。家に帰れば待っているネコ。残業をしすぎればネコは寂しくご飯はない。たとえ一人暮らしでも急いで家に帰るようになるのだ」
　この後すごく長く説明するので要約すると、心を病んでる人にはアニマルテラピーを施し、寂しい人にはネコ暮らしを勧め、一家に一匹ネコを配ってネコ国家へと塗り替えていく。
　やがて彼はにゃおん党を立ち上げてネコのすみよい社会を作っていくのだ。
　公約は勿論……。
「殺処分ゼロ！　待機児童ゼロ！　暗黒企業ゼロ！　今日は日本、明日は世界を！」
　ネコ政治家、八神修の誕生であった。

このページにイラストを設定する