ボウリングしようよ！｜リアクション

ボウリングしようよ！

「やった、ストライク！」
　倒れるピンの音に、輝夜は手を叩いて喜ぶ。
「サンキュー！　でも、今は勝負中だろ？」
「あっ！」
　はたと口に手をあてる輝夜。慎之介がその様子に軽く笑う。
「で、これで終わりだけど。結果は？」
　慎之介とのスコア差を、輝夜も一緒に数える。ハンデを加えると、
「2ピン差で私の負け……？」
　どうやら今のストライクで、慎之介がギリギリ勝ったようだ。
「あ、危なかったけど勝ったー！」
　際どい勝負を制し、ガッツポーズをする慎之介。
「負けちゃった」
　ストライク、スぺアの数は同じくらい。その並びで思いのほか差がついたようだ。調子はいつもより良かったが、これは仕方ない。
「そういえば、勝ったらなにをお願いするつもりだったんだ？」
　慎之介にそう聞かれ、少し迷ってから輝夜は口を開く。
「勝てたら、マウンテンバイクの後ろに乗せて家まで送って行ってほしいかな……って。２人乗りできるかな？」
「……へ？」
「ダメだったら、私がマウンテンバイク借りて漕いで帰る！」
「ちょ！？」
「慎之介くんは走って帰るんだよ！」
「けっこうキツイ！？　マイガッ！」
「結局負けちゃったけどね……それで、何すればいい？」
　願望を打ち明けた後、何を言い出されるかとドキドキする輝夜。勝者は慎之介だ。
「うーん」
　慎之介の顔が悩ましげに歪む。勝負に夢中で考えてなかったのかもしれない。
「……とりあえず、もう暗いみたいだし、送ろっか」
「え」
　輝夜は目を丸くした。
「でも2人乗りも、俺が走るのもナシ。ゆっくり歩いて行こう」
「……慎之介くんのお願いは？」
「とりあえず保留」
「えー！」
「咄嗟に思いつかないって。早く帰らないと家の人も心配するだろ？　だからこの話はまたネクストタイム！」
　やはり勝負に夢中で忘れていたらしい。
　釈然としない輝夜だったが、とりあえず送ってもらえるからいいかなぁ、と、帰り支度をしながら思うのだった。

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