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2月の魔法の解けぬ間に
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「さあ、いよいよ新たなお菓子レシピにチャレンジするときなのです!」
という溌剌たる声に、
荒井 景貴
は思わず振り返った。大きな紙袋を両手に提げた少女の背中が、たたたたっと走り去っていく。黒い髪がなびいていた。
職業病かもしれない、と景貴の唇に苦笑が浮かんだ。『お菓子』『レシピ』という言葉を耳にすると、つい反応してしまう。
「どうしたの?」
そんな様子が気になったのか、
紅林 柳霞
が彼を見上げていた。
「いえ、何でも」
と景貴は受け流して、
「ところで、今日は本当に良かったと思います。こうしてちゃんと、結婚の報告をすることができて」
彼の言葉を聞き、柳霞は鈴が鳴るような笑みをこぼした。
「お疲れ様。緊張した?」
「少し……でも、晴れやかな気持ちですね」
「お祖父様もお祖母様も、びっくりしてたけど喜んでくれたね」
と告げる柳霞は右の人差し指で、婚約指輪の表面をなぞっている。声は弾んでいた。
柳霞と景貴は、日本に戻ってきた柳霞の祖父母に面会し、結婚の報告を済ませてきたところだった。事前に情報を入れていなかったため祖父母の驚きは大きなものだったが、彼らは孫の気持ちを受け入れ、喜んでくれた。
「祝福してくれました。お二方には、結婚式にもぜひ来て頂きたいと思います」
そうね、と柳霞は返し、「結婚式に」と小さな声で繰り返した。
なんだかまだ夢の中にいるような気分だ。けれど指には確かに、婚約指輪の感触がある。
ここ数日曇り空が続いたというのに、今日は空がとてつもなく青い。それも、水彩絵の具で塗ったような青だった。真夏の濃い青も悪くはないけれど、冬ならではの透明感のある青空は格別だと柳霞は思う。こんな晴天だと心も晴れやかになろうというものだ。
とりわけ、一生の記念になるものを買いに行く日には。
瀟洒な星ヶ丘の石畳を、景貴と柳霞は並んで歩く。デートウィークであろうとなかろうと、もう彼と彼女は公式の婚約者同士、少しくすぐったくはあるものの、それでも、肩寄せ合うようにして宝石店の入り口をくぐった。
「これはお嬢様、お待ち申し上げておりました」
年配のオーナーが恭しく頭を下げた。隙のないスーツの着こなし、頭は雪のような総白髪だ。温厚そうな目を、深い皺が額縁のように飾っている。彼はかつて、紅林グループの会計士を務めていた。引退後、寝子島に移ってこの店を始めたのである。ゆえに柳霞とは旧知であり、今でも彼女を『お嬢様』と呼ぶ。
「本日は指輪をお探しでしたね」
と問われて、答えたのは景貴だった。
「はい。結婚指輪を」
そうでしたね、と感慨深げに一拍おいてから、「おめでとうございます」と目に笑みをたたえてオーナーは言った。
「どうぞご覧下さい」
鍵の付いたトランクを取り出して開く。それ以外のことは言わない。無駄に語ることより、指輪そのものに語らせることを彼は重視しているのだ。
黒い台座に、夜空の星のように沢山、けれども整然と指輪が並べられていた。
婚約指輪と違って普段身につけるものだから、いずれも過度な装飾はなされていない。けれども螺旋型であったり、特徴的なカッティングが施されていたりと、それぞれ明確な特徴がある。色にしたところで、銀ないし金色が基調とはいえ、そこにうっすらと緋が混ざっていたり、角度によっては青色に見えたり、と様々な態様を花開かせているのだった。
「わぁ……指輪って色んなデザインあるね」
「素敵なデザインの指輪が多くて、迷ってしまいますね」
「ん、ペアでも基本的に男性側のリングには宝石ついてなかったりするんだね」
いくつかを示して景貴は言う。
「この可愛らしい指輪も柳霞さんに似合うと思いますし、こちらのデザインも柳霞さんにぴったりな気が……」
「それ、可愛すぎない?」
「いいんです。可愛すぎる人の指を飾るものなのだから」
「お上手ね。……でも、ありがとう」
くすくすと小鳥のように彼と笑み交わし、ふと柳霞は景貴の手に視線を落とした。
ほっそりと指の長い、女性のように華奢な手。
菓子作りの過程で傷ついたり、火傷したことだってあるはずだが、彼の美しい手はそんな経歴を微塵も感じさせない。
「……景貴さんとペアだから、景貴さんがつけても恥ずかしくないデザインがいいかな」
「僕のことは気にしなくても」
「でも、気になるじゃない。私ひとりの買い物じゃないんだもん」
「そうですね」
景貴はゆっくりと、噛みしめるように言葉を紡いだ。
「これは、ふたりの買い物ですね」
「でしょう? だから、景貴さんの好みを聞きたいな」
「好み、ですか」
景貴は戸惑った。菓子作りのときに見せるような眼差しで真剣にリングを見つめるも、「これも良さそうです」「しかしこちらも捨てがたい……」と、目移りして仕方がない。ついに、ギブアップというように告げた。
「ど、ど……どうしましょう……選べば選ぶほど、候補が増えていってしまいます」
だったら、と柳霞は口を開いた。実は、ずっと気になっていたリングデザインがあったのだ。
「ねえ景貴さん。この、ふたつ合わせると図案が浮かび上がるタイプのってどうかな?」
このあたりの、と指で示した。合わせ絵になる形状のリングは、全部で三種類ある。
「……貝覆いの貝みたいに私と景貴さんだけが互いとぴったり合うって感じがして、特別な感じがするんだけど」
景貴さんが恥ずかしいなら別のにするけど、と言い添える。
「なるほど、いいですね」
恥ずかしくなんてないですよ、と景貴は優しく言った。
「二つの指輪を合わせると模様が完成するというわけですか。英語圏ではパートナーのことを『ベターハーフ』と呼ぶことがあります。良き半身……文字通り、ふたりでひとつになるべき魂の片割れともいうべき存在ということですね。その考え方を表現するようなリングで、素敵だと思います」
魂の片割れ――何気なく彼はそう言ったのかもしれないが、柳霞が景貴に抱いている気持ちはまさにそれだった。とてもうまく表現してもらえた気がする。
「良かった。じゃあ、どれにしよう?」
「柳霞さんの好みは?」
「うーんと……」
少し迷ってから、柳霞はひとつを指さした。
「この、単独だと天使の羽、合わせるとハート型になる指輪が一番気に入ったな。ふたつの心があわさって、未来を目指す翼になる、っていう感じで」
「実にいい。僕も、それが一番気に入りました」
色はシルバーに近いゴールド、マッド加工(つや消し)してあって上品な質感だ。
柳霞と景貴がうなずきあうのを確認して、オーナーが声を掛けた。
「加工はいかがいたしましょうか? 宝石を埋め込むことも、裏側に文字を彫ることも可能です」
良ければ、と景貴が言う。
「では、宝石は柳霞さんの誕生石のダイヤモンドでお願いします」
彫る文字もすでに決めてある。柳霞が言った。
「指輪の内側には『Kagetaka & Ryuka』と名前を入れてもらって……それで」
模様を入れることは可能か、と問うと、よほど複雑なものでなければ大丈夫です、とオーナーは請け負ってくれた。
「じゃあ、動物の模様を入れることが可能ならば私のほうにはアライグマを」
「そして、僕が身につける指輪には猫の模様をお願いします」
オーナーは「承ります」と恭しく告げる。希望はきっと通るだろう。
「それで、あとひとつお願いしたいことが……」
柳霞が切り出したのは、リングを首から掛けるためのチェーンはないか、ということだった。
「景貴さんはお仕事中、衛生上指輪つけていられないと思うから」
「もちろんございますとも。チェーンはサービスでご用意させて頂きます」
オーナーの回答は素早く、頼もしい。
「柳霞さん……そんなことまで考えていてくれたんですね」
「景貴さんはパティシエでしょう。やっぱり、仕事中には指輪を外さなければならないものね」
「ええ、その通りなんですが……その心遣いが嬉しいです。ありがとうございます」
「お礼はいいの」
と言った柳霞の手が、自然に景貴の手に触れていた。
「ただ、私が、ずっと身につけていてほしかっただけだから」
「僕も、あなたと一緒に選んだ指輪をずっと身につけていたいです」
その手を景貴は握り返す。
ふたつのハートは、結ばれて一対の羽根となる。
天使の羽根、その向かう空は、今日、この日の空のように、ずっと澄み切っていてほしい。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
コメディ
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2016年10月28日
参加申し込みの期限
2016年11月04日 11時00分
アクション投稿の期限
2016年11月04日 11時00分
参加キャラクター一覧
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