ねこじまクラフト｜リアクション

ねこじまクラフト

●マルチにあそぼうクラフトライフ
　渥美ニナはアスファルトとロードローラーの偉大さを体感していた。
　詳しく説明しよう。
　木材を加工できるなら車輪くらいいけるでしょと思ってなんとかかんとか丸っこい木の板を作ったニナは、軸と板をそれぞれ使って小さい荷車を作った。
　パーツの接続に釘やら縄やらが必要なところを、ニナのろっこんでがちゃんがちゃんくっつけていい具合に形成できたのだ。
　この時点で木材確保なんて楽勝かと思われたが、拠点に持ち帰ろうと引いた開始二分でつまづいた。
　道の段差が激しいのだ。
　あと土にめっちゃ車輪が沈むのだ。
　あとなに、この、車輪っていうアイテム？　めっちゃきしむし引きづらい！
　牛に引かせようと思ったが、牛はなんか明後日の方向にいくし。
　これは一人では無理だ。そう察して、森からスケッチブック一冊だけ持って出てきた旅鴉月詠に声をかけた。
「おーいそこの人、協力しませんか？」
「……」
　足を止め、振り返る月詠。
　三秒の間を挟んでから。
「しよう」
　頷いて、スケッチブックを開いた。
　てくてく歩いて、荷車にぽんとタッチ。
　すると、荷車もろともスケッチブックの中に絵となって吸い込まれたではないか。
「へえ、便利……」
「全部くっついていたおかげで、ひとまとめにできた。その能力も、便利だと思うな」
　と言いつつ、くっつけられるならソリみたくしたほうがこの場合は楽だよみたいなことをも教えてくれた。
「もしかして、ネコクラに詳しいんですか？　現実と違うルールが結構あって、実はちょっと手こずっているんですよね」
「なら、一緒にやろう。仮拠点を作るところだから」

　月詠に言われて広く見通しの良い平原へやってくると、仙藤紫が地面に石材のブロックを敷き詰めていた。
　体感でワンルームマンション二つ分くらいの小さなスペースだが、床にはベッドや作業台、チェストなどがコンパクトにまとめて配置されている。
「あら、お帰りなさい。木材は沢山とれた？」
「代わりにとってくれた人がいたからね」
　と言って、ニナを指し示す月詠。
　スケッチブックを破いて荷車を取り出すと、（能力をつかって割と限界まで積み上げた）原木をニナに下ろすように言った。
「家を作る時も能力を使います？　強度が上がると思いますよ」
「いいけど、きっと疲れるから普通に積むだけで大丈夫よ。ブロックごと壊さない限り外れないから」
「それより」
　月詠は箱から木のボウルを取り出すと、キノコシチューを注いで差し出してくれた。
「何が食べた方がいい。お腹がすくとうごけないぞ」
「わ、助かります」
　そらから三人で協力して、それらしい高床式住居を作った。
　金属はまだ希少だということで石と木材で土台を組み、床と壁は木材。天井は斜めにしつつ間から風を入れる蔵構造を取り入れて快適さを求めてみた。
　床下や内外の壁に明かりをともせば完成である。
「明るくしておけばモンスターも現われない。さ、寝よう」
　こうして、偶然であった三人のマルチプレイ生活の一日目が幕を閉じた。

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