ねこじまクラフト｜リアクション

ねこじまクラフト

●四角いスローライフ
　雑草をむしむしして、なにやら小麦の種らしいものを手に入れた。
「おー……」
　種をかかげみる恵御納夏朝。
　これをたがやした土にうえればすぐにでも麦が育つらしい。
　ふと振り返ると、鶏がこっちをみている。
　カクカクしてるわりにはつぶらな瞳のニワトリさん。どうやら種を凝視しているらしく、右へ左へ降ってやるときょろきょろと動いた。
　夏朝の頭上で何かがピンと閃いた。

「頑張りましょうねシュー君！　まずは資材調達です！」
　木で出来た斧をぶんぶん振っては木を切り倒して木材を調達する椿美咲紀。
　かちゃかちゃ組み合わせただけで斧が出来る仕組みも驚きだが、木だけで作った斧で木が切れる事実にもちょっとおどろきである。さすがにゲーム空間。色々なものが省略されている。
　一方で、石材をくんでかまどを作った八神修が原木を焼いて木炭を作っていく。
　それを棒と組み合わせて消えない松明をクラフトしていた。
「家の周りや家の中にこれを置いていくんだ。明るいところにはモンスターが沸かないからね」
「そういうルールなんですねー」
　といいつつ、ふと振り返る。
　夏朝がニワトリの集団をつれて歩いていた。
　ホイッスルをピッピと吹きつつ、種を手に持って降りつつ、後ろ歩きでニワトリの団体さんを誘導している。
　美咲紀たちの作った木の囲いの中へと誘導すると、柵をぱたんと閉じてニワトリたちを閉じ込めた。
「おお、鶏（ちきん）がこんなに沢山……」
「麦が育ったら牛や豚も誘導できるようになるから、まずは農作だ」
　修は石材と棒を組み合わせてクワをつくると、川辺から引いてきた水でしめらせた土のまわりと耕し始めた。
「この具合で畑を作れる。できるか？」
「趣味で畑仕事してますから、おまかせですっ！」
　ビッと敬礼して、美咲紀はクワを受け取った。

　一日もたてば麦はわしわし生えて、黄金色の穂を垂らしていた。
「わあ、麦が沢山」
「こんなに早く収穫ができるなんて夢のような世界です！」
「ゲームだしね」
　夏朝は麦を一束収穫すると、近くを歩いている牛や豚へと降ってみた。
　ぶもーとかぎめーとかいってめっちゃ寄ってくる牛たちに軽く慌てつつ、再びの後ろ歩き誘導からの柵でとじこめからの、麦をためしにあげてみる夏朝。
　すると、牛どうしがくっついて間にポコンとちっちゃい牛が誕生した。
　さすがゲーム。生命の誕生が大雑把だ。
　一方で、美咲紀はクワをがしがし振り回しては麦をかりとり、綺麗に植え直してから汗をぬぐっていた。
「畑仕事って、きもちい……」
　なんかスローライフの魅力に目覚め始めている美咲紀である。
「あとで麦をつかってパンを作りましょう。シュー君に聞いたとおりにクラフトすればできますよ」
「パン……」
　なにげに、この世界で初めての料理である。
「どうやらうまく収穫できたみたいだな」
　修が犬をつれてやってきた。
　厳密には狼だが、森で出会ったところで骨っこ与えたら懐いたらしい。
　『シュー君わんこ好きだなあ』と思って見守る美咲紀たち。
「こいつはカインと名付けた。時には一緒に戦ってくれる頼もしいやつだぞ」
　ニワトリに牛に豚に羊にわんこ。早速このゲーム生活も賑やかになりそうである。

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